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act.5三日月サプリ<55>

「折り紙で沢山輪っか繋げたやつって今どこにあったっけ?」 会場になるリビングを飾り付けるバルーンを並べながら葵に問われたのは、以前共に作った飾りの所在。頻繁に使うものではないから、と仕舞った憶えがあった。 「あぁ階段下の物置じゃなかった?」 思いついたまま口にすれば、葵はすぐに立ち上がってその場に向かい始めた。だが、その後ろ姿を見送りながらふと気が付く。確かそこには葵を近づけさせては行けなかったのではないか。 正面に居る京介も同じことを考えたのか、すぐにソファから体を起こして葵の後を追いかけた。だがあと一歩遅かった。 階段下の収納扉を開いて中に入っていた葵は、折り紙の飾りよりも先に自分の名が書かれたダンボールを開いてしまっている。中身はもちろん、馨からの贈り物であるクマのぬいぐるみ。 「……これ、何?」 しっかりとクマの手を掴んでいる葵が向けてくる瞳は冬耶や京介の気持ちとは裏腹に期待に満ちたもの。欲しいと思っていたものが贈られたのだから無理もない。 今更どう取り繕っても葵からそれを取り上げるのは不自然だ。 「それな、実はあーちゃんに……」 「お前のじゃない。触んな」 葵宛だとは隠しようがない、そう考えて自分たちからの贈り物だと言いかけた冬耶を遮ったのは京介だった。言葉だけでなく、葵の手から引ったくるようにぬいぐるみを奪い、ダンボールへと詰めなおしてしまう。 「え、でも……どうして」 冷たく叱られて葵はショックを受けたように京介を見上げるが、苛立ちが収まらない様子の京介はその視線すら受け止めようとしない。 「京介、今のは俺の不注意だ。あーちゃんに当たるな」 葵の瞳に涙が滲み始めたのを見咎めて冬耶は弟の腕を掴んで止めに入るが、彼は怒りを押さえきれなかったのかダンボールを蹴飛ばして部屋を出て行ってしまった。そのまま二階に上がる派手な足音が聞こえてくる。 「京ちゃん、なんで怒っちゃったの」 「うーん、そうだなぁ」 呆然とする葵を抱き締めて冬耶はこの状況をどう切り抜けようか思案する。京介は葵の物ではないと言い切ったが、ダンボールの上部に貼られた送り状には葵宛だと間違いなく記載されている。クマのぬいぐるみ自体も葵が欲しがっていたものだ。

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