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act.5三日月サプリ<65>
「京ちゃん?」
名を呼ぶとゆっくりと京介の顔が近付いてくる。避けるように目を逸らせば、顎を掴まれて正面に向き直された。そしてゆっくりと唇が合わさる。最初はただ唇を啄むだけのものだったが、温度が馴染むようになると角度を変えてさらに深く重ねられる。
「……んッ、京、ちゃん」
「逃げんな」
合間に身を捩るがそれすらも許されない。肩をベッドに押し付けられてもう一度強くキスを落とされた。”怒っていた”ではなく、きっとまだ”怒っている”なのだろう。痺れるくらいに舌を吸われ、噛まれると背筋が震えてしまう。
キスだけじゃない。乾いた手がシャツの裾から潜り込んで肌を撫でてくる。くすぐったくて思わず京介の胸を押し返せば、ようやく口内を犯す舌が離れてくれた。でもその瞳に宿る熱は増している気がする。
「こないだも言っただろ。お前が他の奴に触られんのムカつくって。なんで簡単に触らせんだよ」
ようやく京介が苛立ちの理由を口にしたが、それでも葵には根本から彼の気持ちを理解することが出来ない。
「どうせベタベタ触られたんだろ?何されたか言ってみ?」
「何って……普通、だよ」
つまむ所など殆どない腹に指を滑らせる京介がどんな答えを求めているのかが分からなくて、ただ特別なことはない、と伝える。
手を繋ぐこともキスを交わすことも、そしてそれ以上の触れ合いも、悪いものではないと皆から教わってきたのだ。聖と爽から二人がかりで迫られるのは恥ずかしさのほうが勝ってしまったが、それでも京介を怒らせる要素がどこにあるのか分からない。
「普通って何だよ。全部言え」
「……ッ、痛い」
脇腹を抓ると同時に首筋を噛まれれば当然体に痛みが走る。改めて京介の体を押しのけようとするが、力では到底敵わない。それに、ちっとも引く気配を見せないのだ。葵が双子と何をしたのか全て話すまでは許すつもりはないのだろう。
「誕生日プレゼントで……チューしてほしい、って」
「ふーん。で?したんだ?」
頷けば京介の視線に棘が増す。さっき散々貪ってきたのは京介だというのに、その痕跡すら拭うように唇を指で乱暴に拭ってくる。
「それから?キスで終わったわけじゃないだろ?」
双子とキスを交わした後何をしたか、葵自身、刺激が強すぎて混濁している記憶を京介が誘導するままに遡らせる。
聖にシャツを捲られ、うっすらと残る斑点が見つかった。そしてその犯人を尋ねられたのだ。
「……櫻先輩と、同じコトしたいって」
「へぇ、そういや痕付けられたのは聞いたけど何されたかまでは詳しく聞いてなかったよな。ついでに教えな」
どうやら葵は墓穴を掘ってしまったらしい。双子から求められたことを素直に口にすると、櫻との触れ合いのことまで吐き出せと命令された。
でも自分の口で話すには恥ずかしすぎる。首を振って拒否すれば、京介は苛立ちを露わにして舌打ちをしてくる。そして乱暴なくらいに葵のシャツをたくし上げてきた。
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