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act.5三日月サプリ<66>
「……お前さ、なんで抵抗しないわけ?」
「なんでって?」
「いや、脱がされてんだぞ。普通抵抗すんだろ」
胸元まで捲くられても大して拒まずにされるがままでいれば、そのこと自体も京介に叱られた。いきなり脱がされるのは恥ずかしいとはいえ、京介に着替えさせられるのは慣れている。
「京ちゃん、だから?」
うまく説明出来ないが相手が京介だから平気なのだと告げると、京介の視線がわずかに和らいだ。
「そういうとこ、ずりぃよなお前。期待させんなよ。どうせ大した意味なんてないくせに」
言葉は尖っているけれど、葵の髪を耳に掛けてくる手つきはさっきよりもずっと優しいし、落ちてくる唇も軽い。けれど、まだ許してくれるには遠いようだ。
「元が白いからどこ触られたかすぐ分かるな」
露わになった肌の赤い部分をなぞっているのだろう。京介の指先が櫻や双子の残した痕をつつきながらゆっくりと上にのぼってくる。
「ん……くすぐ、たいから」
「でもあいつらとはしたんだろ?あぁそうだ、会長も、だよな?」
「あッ…や、だ…京ちゃん」
忍の名前まで出してきた京介は肌ではなく、平らな胸の上で唯一尖る部分を指で撫でてきた。つまみはせずに指先でまだ柔らかなその感触を確かめるような仕草だが、双子に散々弄ばれたせいですぐにキュンと切ないほど熱が集まっていく。
「舐められた?」
どこを、なんて聞かなくても分かる。今京介が触れている場所を、だろう。舐められるどころか嫌というほど噛まれ吸われてしまった。でもそれを言葉には出来なくて、葵はただ頷くだけにとどめる。
すると京介は案外あっさりと指を胸から外してくれた。これで終わりだ、そう期待して彼を見上げればまた一つ、キスが落とされる。
元から二人きりの時は都古と同じくらいキスをしたがってくる京介だが、今日は特に多い。嫌なわけではないが、苛立ちをぶつけるようにされるのは苦しい。
「他には?どこ触られた?」
「……もう、終わり」
「だから、すぐ顔に出んだよ。マシな嘘つけ」
他、と表現するが、京介の指は次に下腹部へと伸びてきたことでどこを示したいのかは予想がつく。けれど、否定してもすぐに見抜かれてしまう。
「ここも触られた?嫌じゃないの、お前」
「……イヤ、だよ」
京介がデニム越しに突いてくる箇所はもちろん双子に触られた。葵自身が望んでいるわけではないし、それなりに嫌だという意思は示しているつもりだ。
「でも、教えてって言うから」
「何を」
「皆とどんなことしてるかって」
京介の表情にまた険しさが戻った。だから葵は慌てて言葉を続ける。
「おまじないはちゃんと内緒にしたよ」
「そうじゃねぇよ。俺以外とすんなって約束は?忘れた?」
「……してないよ?」
“おまじない”、はされていない。似た行為だけれど、違うはず。そう思って京介を見つめ返せば今度は深い溜息が戻ってきた。
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