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act.5三日月サプリ<67>

「俺が悪いんだよな、コレ。どうすりゃいんだよマジで」 苦悩するように目を瞑った京介が、そのまま葵の上にのしかかってくる。一体京介が葵の何に苛立ち、悩んでいるのかがやはり理解してあげられない。自分に出来ることは大きな体を抱き締め返すことだけ。 「……馬鹿」 京介の広い肩に腕を回し、オレンジがかった茶髪を撫でてやると、耳元で囁きが返ってくる。口癖のように”馬鹿”と言われるから、それすらももう慣れてしまった。 「あいつらの匂い染み込ませて、舐められまくって帰ってくるとかさ、あんま煽るなよ」 京介からも葵の体を抱き返してきながら、そんなことを言ってきた。やはり双子と仲良くしたことがいけないらしい。 「……聖くんと爽くんがイヤってこと?」 「そうじゃない。あいつらが悪いわけじゃないのは分かってる。嫌いなわけでもない」 「じゃあ、なんで?」 不安になる葵をなだめてはくれるが、京介の表情は晴れない。 「自分に腹立つんだよ。もっと早く捕まえておけば良かった」 葵を抱き締める腕に力が込められた。いつも饒舌なわけではないし、言葉も乱暴で分かりにくい節がある。でも今日は更に解読が難しい。慰めてやるために髪を撫でる手を再開させれば、彼の体がより深く凭れかかってきた。 「どうしたら良い?どうしたら京ちゃんのイライラ、おさまるの?」 本当は聞かずとも彼の望むことを察してやりたいが葵にはどうしても想像が出来なくて、こうして素直に尋ねることしか出来ない。 すると京介は葵の問い掛けに少し驚いたような顔をしてみせたが、しばらく黙り込んだ後、また葵の耳に唇を寄せてきた。 「とりあえずさ、あいつらの匂い残ったまんま抱くのは嫌だから。風呂、行く?」 「お風呂入りたいの?」 「人の話ちゃんと聞けよ。そっちが目的じゃねぇっつーの」 最近では一緒に入ろうと誘っても滅多に乗ってきてくれないのに珍しい。そう思って嬉しくなったのだが、また叱られてしまった。でもそれでも構わない。 「一緒に入るの楽しいもんね」 「……警戒されないのも問題だよな」 京介からは呆れたように耳を噛まれるけれど、痛みを覚えるほどの強さではない。そういうスキンシップも彼が好んでいることは知っているから受け入れようと葵は思う。 髪に指を絡ませ微笑めば、ようやく京介も薄く笑みを返してくれたのだった。

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