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act.5三日月サプリ<75>*

とりあえず、そう自分に言い聞かせて京介はよりきつく葵を抱き寄せて猛った自身と葵のそれを合わせて一緒に扱き上げる。いつもは決して自分の欲を感じさせなかったが、タガが外れてしまった状態ではどうでも良くなってしまう。 新たな感覚に葵の背中が反るけれど、前後両方の手を強めればどちらにも体を逃がせずに涙とくぐもった泣き声だけが重ねた唇から漏れ聞こえる。 初めての感覚に体を震わせるのは葵だけではない。葵とキスを交わしての自慰行為は、一人で熱を鎮める時には感じない高揚感を生み出す。 「ふ、ぁ……んんんッ」 「……ッ、く」 いつ達してもおかしくなかった葵が体を震わせたすぐ後に、京介も溜まりきった欲を吐き出した。はぁはぁと荒い息を紡ぐ葵を抱き寄せて、呼吸の度にひくひくと収縮する蕾からも指を抜いてやる。 「葵、平気?」 真っ赤になって泣く葵はどう見ても平気ではない。それでも京介の問い掛けに答えるように頷くのだ。 「悪いけど、まだ寝るなよ」 「……ん」 悪戯の痕跡を消すために浴槽の湯を抜きながら、シャワーでぬるつく体を流してやると葵は眠そうに目を擦り始めた。熱を放出したら眠るよう躾けてきたのは京介なのだが、今夜はまだ寝かすつもりはない。 大判のバスタオルで体を包んで浴室を出ると、新鮮な空気が火照った体を一気に冷ます。でもまだ奥底の熱まではおさまりそうもない。 「ボタン、とめられない」 「後でやってやるから」 指先が震えて上手くパジャマを着られないという葵の訴えを京介は軽く受け流した。どうせすぐ脱ぐのだから、そんな京介の打算など気付きもせず、葵は頷いてみせる。 下着とスウェットのズボンしか身に着けていない京介のことも、暑がりだからとでも理解しているに違いない。 「今日は、京ちゃんの部屋?」 ふらつく葵の体を再び抱き上げて二階に上がれば、運ばれる先が自室ではないと知って葵からは不思議そうな目線が向けられる。 「今日はな」 「京ちゃんのベッド、大きいもんね」 そのベッドで何をするつもりなのか理解していないくせに、葵は勝手に納得したように微笑んでくる。随分と勇気を出して先に進んだつもりなのだが、まだまだ葵には通じないらしい。 「水、持ってくるから。寝るなよ」 ベッドへと下ろした葵に言い聞かせると、頼りない頷きが返ってくる。とろとろの目は今にも眠りに落ちそうだ。かといって、軽くのぼせている状態の葵に水を飲ませないわけにもいかない。 「起きてろよ」 部屋を出る前にもう一度命じると、葵からはひらひらと手を振られた。その表情は幼さの中にどこか色香を感じさせる。京介はすぐにでも押し倒したくなるのを堪えるよう、少し乱暴に扉を閉めた。

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