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act.5三日月サプリ<102>
「……あの、遥さんと連絡って取ってますか?」
「何度か電話は来たな。どこへ行っても女に見られると文句を言っていたよ。だから髪を切れと散々注意しているのに」
ボックスを梱包しながらの譲二の言葉に、葵は一度クスリと笑ってみせたがすぐに沈んだ顔をする。自分宛てに一向に遥から連絡が来ないことが悲しいのだろう。
「ほら、これも持ってけ。何人居るんだ」
譲二は葵の変化に気が付かず、レジ横に置かれたマカロンまで袋にぽんぽんと詰め込み始めた。葵が慌てて断っても彼の手は止まらない。
「君はこっちか」
「……どうも」
京介の存在にもようやく目を向けた譲二は、ビターチョコの包みを手渡してくれた。京介があまり甘いものが得意ではないことを覚えていたらしい。
遥ならきっとこの光景を見たらまた一方的な親切をかます父親に苦言を呈すだろうが、京介は彼のこういう所が苦手ではない。自分もどちらかと言えば彼のような不器用な性質であることを理解していたからだ。
「今年の夏は来るのか?」
店の出口まで見送りに来た譲二は名残惜しそうに葵の頭にぽんと手を置いた。
遥は葵の対人関係の訓練として去年の夏休み、半ば強引にこの店でバイトをさせていた。最初は葵も苦労したようだが、自ら冬休みも働きたいと望むほど楽しい時間を過ごせていたようだ。働きの対価として貰えるお小遣いなら気軽に使いやすい、というのも葵にとっては魅力的だったはずだ。
けれど、春休みもこのゴールデンウィークも、葵はバイトをしたいとは言い出さなかった。京介や冬耶にはきちんと理由を告げてこないが、遥が居ないことが原因なのは明白だ。
それでも譲二に直接誘われれば葵は戸惑う様子を見せたが、こくんと頷いて譲二を見上げた。
「もしご迷惑でなければお願い、したいです」
「いつでも人手不足だ。ちっこいのでも役には立つ」
譲二の物言いに怒るどころか、葵は嬉しそうに目を細める。
いつのまにか葵はこうしてよその人間ともうまく付き合えるようになってきた。さっきまで会っていた宮岡ともそうだ。いくら相手がプロだとはいえ、二度目だというのに葵があそこまで心を開くとは正直京介も予想していなかった。
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