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act.5三日月サプリ<105>

駅の改札を抜ければ、ごく一般的な駅前の光景に不似合いな面々が既に葵達を待ち構えていた。その姿を見つけて京介がそっと繋いだ手を離せば、葵は一瞬寂しそうな目を向けてきたものの、黙って前へと向き直った。京介が人前でくっつきたがらないことは理解し、こうして我慢しようとしてくれる。 距離が近づくに連れて、葵の足取りが軽くなっていく。 「ごめんなさい、お待たせしました」 「大丈夫だよ、僕らが早く着きすぎただけだから」 葵の謝罪に一番に答えたのは眩しいぐらいに真っ白のシャツを着た奈央だった。京介は制服以外にボタンの付いたシャツなど身につけようとは思わないが、爽やかな容姿の奈央にはこれ以上無いぐらいにしっくりと似合っている。 「だから奈央に任せるのは嫌なんだよ。時間に余裕持ちすぎて結局無駄になるじゃん」 「でも遅れるのは嫌じゃない?途中で何があるか分からないし」 「何があるというんだ。初めから車で来れば良かった」 どうやら奈央は、両脇の忍と櫻を連れて電車でこの場までやって来たらしい。歓迎会へも頑なに自家用車で移動した二人に公共の交通機関を使わせるとは、奈央はなかなか勇気がある。 その理由は彼等が手にしている手提げ袋にヒントがあるだろう。袋にはこの駅から数駅離れた場所にある百貨店のロゴが刻まれている。今日の主役のことはただ呼び出しただけだが、他の招待客には双子の誕生日会だということは伝えている。贈り物を用意してきたようだった。 「なんで急に誕生日会なんてやろうと思ったの?」 家までの道を先導する葵に並んだ櫻が疑問を抱くのも無理はない。 「二人共誕生日会やったことないって言うから……。それに、連休最後だし、皆で思い出作れたらいいなって、お兄ちゃんが」 「また西名さんか。葵は西名さん基準でしか動けないのか?」 冬耶の発案だと告げた葵に苦笑いする忍は、口調とは裏腹に葵に向ける目は甘ったるい。冷徹な印象を与える彼がこんな顔をするなんて、やはり彼も葵のことが可愛くて仕方ないらしい。 当たり前のように葵を挟んで歩く生徒会のツートップ達の背中を見ながら、京介は昨夜の出来事を思い出した。彼等は葵をただ可愛がるだけじゃない。性的にも手を出しているのだと、葵本人に白状させて知った。押さえていたはずの感情がまた静かに揺らぎだす。 そんな京介の気を逸したのは、前列に加わらず、京介の横に並んできた奈央だった。葵曰く、彼は葵にそうした手出しはしていないらしい。予想通りではあったが、やはり生徒会では葵と二人きりにして安全な人間は奈央しか居ないだろう。

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