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act.5三日月サプリ<117>

「で、やっぱ行かんの?」 「アンタは?」 着流しの裾をはためかせて足早に西名家から遠ざかろうとする都古に着いていけば、彼からは幸樹こそ行かないのかと訴えられた。 「俺はその、まだ会う時期ちゃうかなって」 「……それ、アンタが、決めんの?」 数が少ない分、都古の発する言葉は随分と鋭く刺さってくる。確かに葵からは会いたいと思われている。その気持ちを無下にし続けているのは幸樹の都合だ。 なんだか痛い所を突かれてしまい幸樹は思わず歩みを止めた。するとそのまま立ち去るかに思えた都古は数歩先で幸樹を振り返ってきた。 「アオ、泣かせたら……殺すよ」 「物騒なこと言わんといて。君、ホントにしそうだからコワイ」 都古がどこまで葵に真っ直ぐな感情を抱いているかは学んだつもりだ。その気持ちをからかうような真似をしてはいけないと、京介からはあの時かなりきつく叱られもした。 また歩き出した和装の背を追いながら、幸樹はふと思いついたことを口にした。 「なぁ君、喧嘩強いってほんま?」 都古は幸樹の問いには答えず、ただ訝しげな目を向けてくる。 元々の身体能力の高さと格闘技の素養が合わさって、喧嘩はそれなりに強いことは知っていた。一度本気で拳を交えたことがあるという京介が言うのだから間違いはないだろう。 上背はあるが都古は華奢だ。でもそれはただ無駄な肉が付いていないだけで随分と筋肉質らしい。普段体の線が出にくい和服ばかりを着ているから分かりにくいが、袖や裾から覗く前腕やふくらはぎは、確かにしなやかな筋肉がついていることが分かる。 「ちょっとな、嫌な予感がすんねん。君と京介がおったらとりあえず藤沢ちゃんの身は安全やと思うけど」 幸樹が気になるのは明日から謹慎が解除され、登校するであろう若葉の存在だった。若葉がなぜ葵に興味を持ち始めたのか、その理由を探る前に休みが明けてしまう。焦りを感じずにはいられなかった。 「……アオ、危ない?誰?」 都古の切れ長の目に殺気が宿るのを感じた。日中の住宅街で放つには随分と物騒だが仕向けたのは幸樹だ。その視線を真正面から受け止めながら、幸樹は彼の警戒心をより強めるべく、言葉を続けた。

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