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act.5三日月サプリ<146>*

「みゃーちゃん」 得体の知れない感覚が怖くて、つい甘えるように名を呼び、縋ってしまう。普段丸まっていることが多いせいで忘れがちだが、こうして肩に腕を回せば随分と男らしい体つきをしているのだと思い知らされる。それを実感するだけでも体が戦慄いた。 「アオ、寒い?」 葵が体を震わせたのを感じたのか、都古はキスをやめて不安そうに見つめてくる。寒いわけではない。むしろ尋常でなく体が火照って堪らない。だから葵はただ首を横に振って都古に主張するしかない。 「じゃ、続けていい?」 葵が頷くと、都古の肩に置いた手は取り上げられ、彼の頭へと導かれた。撫でて欲しいというアピールだ。望まれるままに彼の髪に指を通せば、それを合図にゆっくりと都古の唇が下降していく。 「……ンッ…ん」 首筋にかかる髪を払って露わになる肌を啄まれるとくすぐったいだけではない感覚が生まれてくる。だが、更なる刺激を覚悟した葵の予想を裏切り、鎖骨まで降りた彼の唇はそのまま胸元を肌蹴させず、パジャマの上を滑ってくる。 柔らかなコットンの生地越しでも十分に都古の唇の感触が伝わるが、直接的な刺激を学習している肌にはむず痒く、もどかしい。 「あッ、…んぅ…ん」 いつも葵の体に触れている都古だから、もしかしたら布を纏っていてもどこに何があるのかなんてお見通しなのかもしれない。器用に服の上から胸の突起を啄まれて、葵は思わず高い声を上げた。 自分の意図しない声が出るのはちっとも慣れない。堪えるように口元を押さえたのだが、その手は再び捕らえられて元の場所へ引き戻されてしまう。 「アオ、ここ」 これではどちらが飼い主か分からない。命じられるままに都古の髪を掴めば、満足げな笑みが返ってきた。 刺激に腫れていく胸をただ執拗に布の上から撫でられ、葵が耐えきれずに背中を反らせばもう片方の突起へと対象が変わる。その繰り返しでいつしか、触れられていない側の胸も布が擦れるだけで体がひくつくようになってしまった。 湧き上がる熱を逃がすようにつま先でシーツを掻いてみるが、足を動かしてようやく自身の体の変化に気付かされる。 ”気持ち良いの証” 試着室で櫻に教えられたことも今になって頭に浮かぶ。体が気持ち良いと感じたら反応してしまう。そう言われて半ば強引に自分の手でそこを触れさせられた。 今まで体を洗う以外自分ではまともに触れたことのない器官だったが、そこに触れたらこのむずむずとした感覚が解放されるとも学ばされた。試してみようと手を伸ばしかけるが、取り返しのつかないことになりそうで、葵はやはり目の前の都古に縋ってしまう。

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