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act.5三日月サプリ<147>

「みゃ、ちゃん…も、ムリ」 艶やかな黒髪を一房掴んで訴えると、彼は全て見透かしたような真っ黒の瞳を向けてきた。 「……じゃ、ご飯にする?」 都古は葵が無意識に流していた涙を拭ってくれるが、疼く体に触れないどころか食事を提案してくるなんてあんまりだ。 確かに入浴前、後で夕食にしようとは約束していた。薬を飲むためにも何か胃に入れたほうがいいというのも分かる。けれど、今の体の状態で呑気に食事など出来そうもない。 葵に今出来ることと言えば、体の奥から湧き上がってくる熱を堪えるために、都古の浴衣の掛襟を握りしめることぐらい。 しばらくそうして上がりきった息を整えようとしていると、都古がフッと小さく笑ったことに気がついた。 「ごめん、アオ。意地悪した」 見上げればやはりそこには珍しく悪戯っぽい表情を浮かべる都古がいる。どうやらこうして葵が困ることを見越していたらしい。 「でも、アオが悪い。これ……噛み千切ろうかと、思った」 もう一度、葵の胸元に頬を寄せた甘えた仕草とは裏腹にこの猫は何とも物騒なことを言ってのける。都古が指し示すのはパジャマの下に無数に浮かぶ鬱血の痕。やけに念入りに肌を洗ってくれると思っていたが、どうやら嫌で堪らなかったようだ。 そういえば、京介にはこの痕が消えるまで冬耶と都古には肌を晒すなと注意されていたことを忘れていた。 といっても、今朝目覚めた時にはいつのまにか数も増えていたし、色も濃くなっていた。犯人は京介しか考えられないのだが、そもそもの仕組みが理解出来ていない。 「どうしたらこれ、付くの?知らない間に増えちゃうんだけど」 素直な疑問を口にすれば都古からは深い溜息が溢れる。まだ敏感な肌を吐息が這うだけで肩がびくついてしまう。 「教えて、あげる」 しばらく思案した様子の都古は葵の胸に頬を預けたまま、葵の手をとってパジャマの袖を捲り始めた。手首の傷は大分薄れたとはいえ、まだ完全に綺麗な状態とは言いづらい。その肌へと都古は躊躇いなく唇を近付けた。 「……んッ」 先程までの戯れのようなキスではない。肌がピリつくぐらいきつく吸われてしまう。そして彼が唇を離せば、確かにそこには赤い花びらのような痕が浮かんでいた。

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