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act.5三日月サプリ<168>

「……あれ、開かない?なんで?」 時間外の通行であっても今までは各自に配布されているカードキーをかざせば解錠出来たはずだ。現についさっき、外へ出る時は何の問題もなかった。入学してから今まで何度か夜間に外出したことはあるが、その時もきちんと今の方法で出入り出来ていた。 「あぁ今警戒レベル上げてるから、一般生徒のカードじゃこの時間に外から中に入るのは無理やで」 「え、じゃあ帰れないってこと?」 「警備室に電話してお説教食らったら入れるんちゃう?」 動揺する聖をよそに幸樹はサッと自身のカードを取り出して門を開いてくれた。もちろん聖も一緒に通してはくれるが、もしコンビニで幸樹と出会うことがなかったら聖は間違いなく路頭に迷っていただろう。 「……もしかして、だから一緒に帰ってきてくれたんですか?」 「優しいやろ?惚れちゃう?」 ふざけた調子ではぐらかしてくるが、恐らく図星なのだろう。生憎惚れはしないが、幸樹が面倒見の良い京介と気の合う友人関係で居続けていることに納得はいった。優しさの表現が不器用な似た者同士なのだろう。 「でも何かあったんですか?警戒するようなことでも?」 「深夜にウロチョロ出入りする厄介者がいてな。魔王様のご指示でそいつをマーク中なのよ」 「魔王って、冬耶さん?」 なぜ卒業した冬耶が学園のセキュリティに口を出すような真似をしているのか。不穏な空気を感じるのは否めない。それに、と聖は気に掛かったことを口にした。 「よく分かりませんけど、その”厄介者”ってやつを急に締め出したら事を荒立てることになりません?」 一体どういうトラブルが発生したのかは分からないが、強硬手段を取ると余計に事態が悪化しかねない気がする。聖が口を挟むような話ではないかもしれない。けれど、彼等の中心にはいつも葵が居る。もし葵に関わることならば聞かなかったことにはできそうもない。 「まぁな。せやから、そいつのカードは役員と同じ権限設定与えていつも通り通過出来るようにしてる」 「……それって意味あるんですか?」 「通ったら通知来るようにしてるから行動は把握できんねん」 それならそもそも他の生徒のカードの設定を変えずとも、問題の生徒のみを見張っていればいいのに。聖が幸樹の説明に釈然としない顔をしてしまうと、彼は更に言葉を続けた。

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