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act.6影踏スクランブル<18>

"移動のこと伝えるのは京介に任せるよ" 冬耶は一番大事な部分を託してきた。己が気軽に立ち入ることが出来ない場所に葵を送り出すことを嫌がっている京介の気持ちなどあの兄は見透かしているに違いない。だからこそ、こうして京介を試してくる。随分と酷な事をさせるものだ。 「やな奴」 「……誰のこと?」 「別に」 兄のことは嫌いではない。ただ京介にとってどう足掻いても敵わないと思わせてくる存在が苦手ではある。 「葵さ、生徒会のフロア行きたいって思う?」 京介の携帯を眺めたままの葵に、少しだけ柔らかな表現で尋ねてみる。これで葵が嫌がったらもう少し先延ばしにしよう。まだ時期じゃない。冬耶にそう返事をすればいいだけの話だと京介は考えた。だが葵が答える前にそれまで大人しくしていた猫が歯向かってきた。 「やだ」 「お前に聞いてねぇよ」 都古の居る場で聞くのは間違いだった。葵の腰に腕を回して威嚇してくる都古の姿を見て、京介は自分の気の利かなさを悔やんだ。 「京ちゃんなんで分かったの?行こうと思ってたよ」 「……は?お前それ本気で言ってんの?」 都古の反応は驚くようなものではないが、葵が肯定を示す頷きを返してきたことは京介を唖然とさせた。葵は絶対に嫌がるはず、そんな風に信じて疑わなかったからだ。だが思わず葵の肩をきつく掴んだ京介の反応に、葵のほうも目を丸くしてくる。 「お別れする時奈央さんの元気がなかったから。あとでちょっとだけ会いに行ってみようかなって」 「なんだ、そういうことかよ。びっくりさせんな」 京介の気も知らず、相変わらず葵は呑気だ。もし京介の尋ねた意味の通り、自ら京介が気軽に立ち入れない場所への生活を望んだとしたらその時はきっと強引に繋ぎ止めておこうとしただろう。 「キリの良いとこだから、今から行って来ようかな?」 「……アオ、行っちゃやだ」 「大丈夫だよ、奈央さんに会ってくるだけだから」 机に広げていた英語のノートと辞書を閉じる葵に、都古は一層葵に抱きつく腕の力を強めたようだ。 奈央は役員の中では唯一葵と二人きりにしても安全な人物だ。それを都古も理解しているからか、我儘は言うけれど拒絶というには温い。これが忍や櫻の元に行く、ということなら怒り出していたに違いない。

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