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act.6影踏スクランブル<41>

「今みゃーちゃんが探してくれてるんだ。見つからなかったらみゃーちゃん、落ち込んじゃうだろうな」 自分のなくし物だというのに、都古を気遣うところが葵らしい。でも葵のノートを必死に探す都古の姿も、そして無かったことを報告する時に葵だけに見せる甘えた表情も、不思議と簡単に想像できてしまう。 「でも見つけてくれてるかもしれないよ?」 「……みゃーちゃんのこと信じてないってわけじゃないんです。でも本当にいつも見つからないから」 奈央からの励ましを受けても、葵は伏し目がちなまま。葵をここまで悩ませるほどに物をなくす経験が多いのだろう。 「なんだかかっこ悪いよね。二人にはお友達沢山作って欲しいって言ったのに、自分が出来ていないなんて」 葵が瞳に悲しみを宿らせたまま爽と聖を見つめてきた。葵はなくし物がただの不注意ではなく、他人からの悪意の表れだと認識しているようだ。葵が同級生らしき生徒から絡まれている所を助けた時もそうだった。 「「かっこ悪いなんて思わないですよ」」 双子で良かったと思うのはこんな瞬間。葵の言葉を否定する、その説得力が増してくれる気がするからだ。 「俺たちのために動いてくれる先輩のことかっこ悪いなんて思うわけないでしょ?」 「あんな大勢の前で誘うとは思わなくてちょっと恥ずかしかったけど」 聖と二人で葵を見据えれば、途端に葵の強張った表情がはにかんだものへと変化した。そして葵も本当はすごく緊張していたのだと打ち明けてくれる。照れ屋で人見知りな葵がそうして頑張ってくれたことを聞くだけで愛しさが増す。 「葵先輩って竹内のこと知ってたんですか?」 聖が口にした疑問は爽も感じていたことだった。名前までは知らなかったようだが、葵なりに小太郎を選んだ理由があるように思えたのだ。 「図書館からちょうど野球部が練習してるグラウンドが見えるの。いつも一番大きな声出して楽しそうだから覚えてて」 葵が生徒会の一員になる前は、放課後図書館で過ごしてばかりだったということはデートの最中に教えてもらった。窓から見える景色の中で小太郎の姿は確かに目を引くかもしれない。 「だから竹内に話しかけたんすか?」 「うん、二人と小太郎くんが一緒に笑ってるところが想像できたから」 躊躇いもなく真っ直ぐに向けられた言葉に今度は爽たちが照れる番だった。葵が言うならそんな未来もあるのかもしれない。そう思わせるだけの妙な力強さがある。 「オリエン、楽しめそうで良かったね」 傍でやり取りに耳を傾けていた奈央も後押しするように微笑んでくれる。小太郎と仲良くすることはもう決定事項になっているようだ。でも反論する気にはなれない。 「ここ、すごく景色綺麗なんだよ」 葵はファイルから去年のオリエンテーションの資料を出して見せてくれるから、本当に楽しんでみたいという気持ちが爽の中に少しずつだが生まれてくる。 だがその時間を忍からの電話が遮った。連絡を受けた奈央の顔がみるみる硬くなり、葵へと何とも言えない視線を送り始める。

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