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act.6影踏スクランブル<51>*

今夜は家族の存在を気にしなくても良い。都古も居ない。葵の体をベッドへと運んでしまえば、我慢強さには自信のある京介でも欲情を抑えるのは難しかった。 あくまでいつもの”おまじない”の延長として、葵を怖がらせないようにしなければならない。頭ではそう理解していても、小さい割にぷっくりと膨らむ唇を喋んでいるうちに、つい夢中になってマットレスのスプリングが軋むくらい強く葵の体をベッドへと押さえ込んでしまう。 「京ちゃん…くるし、から」 キスを振り切ってもたらされた苦情でようやく京介は葵の肩を掴んだ手を弱めたけれど、これで終わらせる気には到底なれない。 「葵、止まんないかも。先謝っとく」 「もうやだ、いつものおまじないでいいっ」 きちんと”続き”をすると宣言した効果なのだろう。葵は焦ったように京介の腕の中でイヤイヤと首を振ってくるのだから、京介が何をしたがっているか想像はついているようだ。 「あれは使わないから。それならいいだろ」 葵を抱くために使ったはずのローションが前回は京介の願望を邪魔した。葵の誤解を解くのは面倒だし、違う方法でゆっくりと慣らしていけばいい。そのために十日という時間は十分に思えた。 「毎日ちょっとずつ拡げてきゃいけるだろ」 「……なに、が?」 思わず心の声が外に漏れてしまっていた。葵から訝しげな視線が送られる。でもそれを無視してキスを落とした。 葵の弱いところは誰よりも知っている自負がある。普段は長めの髪に隠されている白い耳朶。華奢な首筋から鎖骨にかけてのライン。うっすらあばらの浮いた胸元。 確かめるようにキスする範囲を広げていけば、葵はその度にぴくんと腰を跳ねさせる。 「あっ、きょ、ちゃん…んん」 パジャマのボタンはとっくに外していた。大きく左右に捲って現れた胸の飾りも遠慮なく舌を這わす。自分と同じ体の構造をしているとは思えないほど、可愛くて堪らない。 あえてちゅっと音を立てて吸ってやると、面白いぐらいに葵の体が震える。濡れたピンクの先を指で抓んでみても同じ。恥ずかしそうに口元を押さえて京介に恨めしげな視線を送ってくるが、その目こそが京介を煽るのだ。 初めて出会った時から京介を捕らえて離さない蜂蜜色の瞳。

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