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act.6影踏スクランブル<55>*
「ん、んんッ…あぁぁ!」
敏感な先端をちろりと舌先でくすぐってから一気に咥えてやると、葵からは悲鳴にも似た声が上がる。
初めてここを弄ったときは、やはり後孔に触れた時のように未知の感覚に恐怖していたが、今はこうして全身を震わせるほど悦ぶようになった。もちろん、本人は京介が好意でしてくれる”おまじない”と信じて疑っていないのだけれど。
「だ、め…あッ、きょ、ちゃん…ふぁぁ」
「いいよ、葵。おやすみ」
すぼめた唇で全体を扱きなら先走りの蜜を吸い出してやると、葵はすぐに京介の口内に欲望を弾けさせた。それも最後まで搾り取るように頬張ると、葵からはくったりと力が抜けていく。
全てを嚥下せず、あえて残した白濁を垂らす先は荒い呼吸と共にひくひくと蠢く蕾。ピンク色のそこにとろみのある白をまぶすと、視覚的にも随分といやらしくなる。
くちゅくちゅと音を鳴らして蕾に精液を塗り込んでも、葵はもう抵抗する素振りもない。
「あーあ、もっかい風呂入れないとダメだな」
風呂上がりの清潔な体を汚したのは他の誰でもない京介なのだから、この言い草を葵が聞いていたらきっと怒るに違いない。けれど、幸い葵はもう夢の世界に旅立とうとしている。
達したら眠れる。そう躾けてきてしまったから致し方ないのだが、京介としてはもう少し余韻を感じたい。それに京介自身もスウェットの中が痛いほど張り詰めていた。
「マジで入んのか?これ」
弛緩した体は粘液を纏わせた京介の指を第一関節までは難なく飲み込んでくれる。が、京介の高ぶったモノを突き入れられるとは到底思えないほど狭い。
「……きょ、ちゃん?」
達しても尚、体をまさぐられる感触が落ち着かないのか、葵が僅かに瞼を開いてきた。
「ん?もう寝ていいよ、葵」
汗ばんだ額を拭ってやり、促すように頬に口付けてやると、ようやく安心したように葵の目が伏せられた。寝息が溢れるのにもそう時間は掛からない。乱れきったパジャマを直してやると、さっきまでの淫らな様子などまるでない幼い寝姿が現れる。
「俺以外の選択肢なんか捨てちまえ」
まるで刷り込みのように京介は葵を抱きしめながら耳元で囁く。
本来なら葵に恋愛感情を理解させた上で抱くべきだ。綾瀬の主張は微塵も間違ってはいない。でも京介は、葵に迷う隙を与えたくなかった。この存在を手放すなど考えられない。
友人に軽蔑されてもいい。京介は不意に生まれたこの好機を逃さない、そう心に決めていた。
葵を抱いて、そこから恋愛を教え込めばいい。キスも、キス以上のことも、最初から順番が違っていた。未だに”おまじない”なんて嘘も貫き続けている。ならばもう京介にはこのまま突き進むしか道はないように思えたのだった。
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