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act.6影踏スクランブル<83>

「実は七さ、さっき着替えだけでも手伝ってあげよっかなって思って気付いちゃったんだよね」 「……何、を?」 口ごもる葵に七瀬は仕方ないと言わんばかりに切り札を出してきた。妙に嫌な予感がする。 「葵ちゃん、パンツ履いてない」 「え!?なんで?……あ」 「ほら、心当たりあるんでしょ」 言われてみれば妙に下半身がスースーする。直にハーフパンツのジャージ素材が肌に当たる感触もする。もしかしなくても七瀬の言うことは真実なのだろう。葵自身、脱いだ覚えはないものの、幸樹に体を触れられてぐちゃぐちゃに濡れそぼっていたことは覚えている。 「もし葵ちゃんに無理やり何かしたんだったら七が上野先輩殴るけど」 「それは、大丈夫!ぶっちゃダメ」 七瀬の物騒な発言を聞いて葵は慌ててベッドから身を起こし、振り上げる真似をする彼の腕を掴んだ。強引ではあったが、幸樹と仲良くしたいと望んだ結果だ。 「じゃあ上野先輩は葵ちゃんが寝てる隙にパンツ盗むような泥棒ってこと?」 「いや……そうじゃ、ないと思うけど」 幸樹に掛けられた疑いを晴らしてあげたかったが、段々と語尾が小さくなっていく。葵にも濡れたものを脱がせてくれるところまでは理解できるが、それをを持ち去った幸樹の真意が分からなかったのだ。 そもそも幸樹までもああして数えきれないほどのキスを仕掛けてくるとは思わなかった。最後に共に過ごした時間で初めてそっと触れるだけの口付けを交わしたぐらいだ。彼まで葵とあんなことをしたがることに驚かされた。 「七ちゃんって綾くんとチューしてるよね」 「どしたの急に。いっぱいするけど」 唐突な問い掛けに七瀬は戸惑いながらも真面目に答えてくれた。七瀬は双子の兄弟、綾瀬とはとびきりの仲良しで常に手を繋いだり、腕を組んだりとスキンシップをとっているし、皆の前でキスもしている。 「でも綾くん以外とはしてない、よね」 「そりゃあね。綾がヤキモチ焼いちゃうし、まずしたいと思わないし」 「じゃあ綾くんしか好きな人居ないってこと?」 浮かんだ疑問をそのまま口にすれば、七瀬は一瞬間をあけた後、なぜか呆れたように深く息をついてしまった。

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