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act.6影踏スクランブル<147>
「しかし、生徒を監禁してレイプするなんて随分出来の良い教師が居るもんですね」
「……私たちは、恋人だ…あ、葵くんが、望んだんだ」
蔑むような徹の嫌味が我慢ならなかったのか、腹を抱えながらも男はこちらを睨みつけてくる。その目に虚勢は感じられない。だが葵は彼の声だけでも尋常じゃないほど怯えを見せている。そちらも紛れもなく真実。
「たすけ、て…おねがい」
「あれ、お前の恋人だって。どうする?ここに残りたい?」
「やだ、やだ、お願い」
「じゃ、俺と来る?」
余程怖いのだろう。泣きじゃくりながら葵は必死に首を縦に振ってみせた。はじめから一度横取りした獲物を逃がすつもりはなかったが、葵からもこうして求められると充足感が得られる。
「だとよ。残念だったネ」
葵を抱えたまま台を飛び降りた若葉は這いつくばる男を見下ろしてそう告げる。見せつけるように葵の唇を奪えば、彼は絶望と怒りを綯い交ぜにした表情になった。これはこれで若葉の気を満たす。
「若、これが触ったと思うと萎えたんですが」
「そんな潔癖だったっけ、お前」
「嫌でしょう、どう考えても」
粘着質そうな男が葵の体に施した悪戯を考えれば、口淫まで施した徹が後悔したような顔をするのも無理はない。
「お前が勝手にしゃぶったんだろうが」
「美味しそうだったので、つい」
悪びれもせずとんでもないことを言う彼はやはり最高に飽きがこない側近だ。
「ばいばい、センセ」
ワナワナと震えたままの男の頭を遠慮なく踏みつけ倉庫を出れば、恨めしそうな咆哮が背後から聞こえてくる。徹はそれを遮るように倉庫の扉を閉め、壊れた南京錠をはめ直し、ペンチで細工を始めた。ひしゃげさせてしまえば鍵代わりにはなるだろう。
「ありがと」
未だローターを咥え込み、拘束もそのままの酷い状態にも関わらず、倉庫を出られてホッとしたのか葵はまた若葉を見上げて礼を口にした。疲労は限界に達しているのか、その目は今にも閉じてしまいそうなほどトロンと蕩けている。
「テツ、こいつは?連れ帰ってオッケー?」
野良猫を増やすなと口うるさい彼に一応は伺いを立ててみる。
「あぁ、そういや俺は寮で暮らすんだっけ?お前はもう帰ってもいいぜ」
徹が返事をしかけるのを遮って、若葉はそう言葉を重ねた。葵を早く抱くのに適した場所があるならわざわざ帰宅しなくてもいいだろう。
「前戯はまだ途中ですが」
「ハッ、お前、すげーヤる気じゃん。萎えたんじゃないの?」
「洗えば大丈夫です」
仕事の一環かのようにクールな口調で眼鏡を直す徹に不覚にも若葉は声を上げて笑ってしまう。
「あいつに抱かれてたほうがまだマシだったかもネ、チビちゃん」
若葉も徹も体格は桁外れに良いし、体力も常人の域を超えている。華奢な体躯で二人の相手をさせられるほうが葵にとっては不幸かもしれない。
見下ろして哀れんでやれば、葵は自身を苛む甘い刺激に震えたまま見つめ返してくる。
今夜は良い拾い物をした。若葉は猫のように体を丸める葵を抱き直して、軽く口笛を吹いた。
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