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act.6影踏スクランブル<155>

* * * * * * 「クソ、何処に居んだよ馬鹿兄貴」 不通を伝えるアナウンスが流れる携帯電話に、京介は苛立ちを隠しきれずに声を荒げた。 葵が見つかったのは良い。それを冬耶が保護してくれたのも良かった。でも肝心の葵本人の声を聞けもしないし、姿も見せない。恐らく無傷ではなかったのだろう。冬耶がこちらを気遣ってあえて遠ざけているのは分かるが、逆に心配で堪らない。 「……アオは?どこ?」 京介が携帯電話をポケットに仕舞ったのを見て、都古が期待を込めた目でこちらに声を掛けてくる。だが首を横に振れば、彼はまた力無くうなだれてしまった。 馨が学園に来たという情報を知るなり都古はこちらに駆けつけたのだというが、やはり彼は葵のことになると他に無頓着になりすぎる。 浴衣を纏う足元は当然のように裸足だった。何度か靴を履くように促したが、彼はその時間すらも惜しいと言わんばかりに葵の捜索を続けていた。おかげで痛々しい状態になっている。更に悲壮感を増すのが、裸足のくせに都古がずっと大事に抱えているのが葵の革靴だということ。 「とりあえず兄貴が葵と居るっつーから、お前は一回部屋帰って寝ろよ。そのまんま倒れても知らねぇぞ」 今は忍からの指示で葵が消えたと思われる校舎裏の駐車場までやってきていた。でも都古の足取りはおぼつかない。後はこちらで対応すると言ってやっても、やはり都古は引く気配を見せなかった。 当初葵が車で連れ去られたという可能性ばかりを考えて、馨に関連する場所をひたすら潰して回っていたのだが、冬耶からは忍宛に学内を捜査しろとのお達しがあったらしい。 今は忍や櫻が生徒会室のパソコンで、学園内に設置されている防犯カメラの映像解析を進めてくれている。ひとまず葵が消えたとされる時間帯、校舎や寮の入り口に付けられたカメラには葵の姿は見つからなかったようだ。だからこうして京介は都古を連れて原点に立ち戻ることにしたのだ。 校舎裏には教員と来客用の駐車場があるが、この時間帯だ。人気もなく、ただ広い砂利のスペースがガランと広がっている。 「お前、痛くねぇの」 アスファルトや石畳の上を歩くのとは訳が違う。もう一度裸足の都古を気遣ってみたが、彼は京介のほうをちっとも見ようともしないし、口も開かない。余計なお世話、らしい。それともそもそも京介の声など届いていないのかもしれない。

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