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act.7昏迷ノスタルジア<91>*
まるで本物の猫のようにゆっくりと、しなやかな動きで葵の脚の間に滑り込んできた都古は、確かめるように視線を投げかけてくる。彼の指先はすでに葵の下着の縁に掛けられていた。
覚悟したとはいえ、直視するのは恥ずかしすぎる。思わず自らの手で顔を覆えば、京介が葵の髪を撫でてきた。聞き分けのない小さな子供をあやすような、そんな仕草。
葵の様子を見ながら、都古が静かに下着を下ろしていく。布が肌を擦れ、普段隠されている場所が外気に晒される。そのひんやりとした感覚で、自分の火照りを思い知らされる。
「痛そう。アオ、こわかった、ね」
普段は抑揚の少ない都古の声音が揺れた。彼がどこを見ているのか、確認しなくても分かる。
「ひでぇな。ほんとムカつく」
「……んッ、や」
京介の指が傷の浮かぶ根元をそっとなぞってくる。すでにかさぶたになっている箇所を触れられても痛みはないが、刺激を待ち望んでいたかのように腰が震えてしまう。
顔を覆う指をそっと開いて確認すれば、やはりそこは形を変え始めていた。二人はとっくに気が付いているはず。
「葵、どうしてほしい?俺も都古も、お前が望めばなんだってしてやるから」
いつもは葵がどんなに恥ずかしがっても強引に触れてくるというのに、今夜はあくまで葵の意思を確認してくる。髪の隙間を器用に縫って、耳たぶに齧り付きながら囁いてくる京介が恨めしい。
「あ、んっ……わかん、ない」
「大丈夫、アオ。命令、して」
葵の膝を持ち、さらに深く割り開きながら際どい位置に唇を落としてくる都古。でも求めている場所には決して触れてくれない。分かっているはずなのに。彼もまた、葵の指示を待っている。
このままだと辛い時間が続く。頭では理解していても、あんな場所に触れ、そして口付けて欲しいと言葉にしてねだるなんて。
「二人、だから。こわい?」
ウエストに回る京介の腕にしがみつき、ただ身を縮こませることしか出来ない葵に、都古がその理由に当たりをつけてくる。
「それは大丈夫なんじゃね?連休中、双子にめいっぱい食われたみてぇだし。な、葵」
葵の代わりに答えた京介の声音に、意地悪な響きが込められている。耳たぶを噛んでくる力も強まった。
「あいつらに、何、された?」
都古の瞳にも鋭さが増した。彼の指が内腿の柔らかな部分に食い込んでくる。
今と同じように、聖と爽、二人がかりで抱きかかえられ、全身を愛撫された記憶が自然と蘇ってくる。今思い出してはいけない。そう思うのに、あの時ぐちゃぐちゃに溶かされ、泣かされた感覚を思い出した体が甘く震えてしまう。
都古の眼前で色づく箇所も、つられるようにぴくりと跳ねたのが見えた。
「ダメ。これは、俺だけ」
恥ずかしさの余り葵がそこを隠そうと手を伸ばしかけたが、それより先に都古が叱るように根元を喰んでくる。ここに触れていいのは自分だけだと、猫は言い聞かせたいのだろう。
「ああっ……ん、やッ」
思い出させたのは京介であり、都古。だから責められるのはおかしいと思うけれど、ようやく与えられた直接的な刺激に体は悦んでしまう。弱い粘膜を周囲の皮膚ごと吸われ、舌先でくすぐられる。その動きに合わせ、否が応でも声が上がった。
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