981 / 1602
act.7昏迷ノスタルジア<92>*
「おい都古。……ったく。葵、声我慢な」
葵が口元を押さえようとした手を退けて、京介が後ろから少し無理な体勢で唇を塞いでくる。それを合図に都古の動きが、より大胆になった気がした。根元から少しずつ登ってきた舌先が先端を弄り始める。
「んんッ……んー!」
京介のほうへと上体を反らせているせいで、都古の様子は視界の端でしか伺えない。けれど、涙で滲んだ中でも、もうその場所が育ちきっていて、とろとろと透明の蜜を溢しているのは分かってしまう。
「ふぁ、ん……んッ」
せめてランプの灯りがそこを照らさないように身を捩ってみるが、逆に都古には両脚を抱えられ、彼の肩に乗せられてしまうし、京介の腕は葵が逃げ出さなよう一層強く力が込められる。
白い肌の上で焦れったそうに揺れる桃色の器官。都古の唾液か、それとも葵が溢した蜜か、とにかくテラテラと光るそこは目を背けたくなるほど艶かしい。
「すぐ、イっちゃいそ」
「焦らしたら多分飛ぶぞ、こいつ。するんなら、ちゃんとしてやれよ」
戯れのように舌を這わすだけで決して咥えてはもらえない。彼の指も内腿や双丘の間をゆるゆるとなぞるだけ。頭の中はもう、早く強い刺激が欲しい、そればかりが埋め尽くしていく。
「イイの?」
「とりあえずな。でも次は俺がするから、邪魔すんなよ」
「……あ、そ」
“次”という不穏な単語に、どこか不満げな都古の声。それがどういうことなのか、きっと冷静でいたならば分かったかもしれないが、出口を探す溜まりきった熱が思考をダメにしていく。
「アオ?」
都古が葵を見上げてくる意味。散々教え込まれたから、蕩けた頭でもそのぐらいは分かる。どうして欲しいか、言わせたいのだろう。
彼の吐息が、敏感になった部分をくすぐってくる。もうこれ以上は我慢できなかった。
「みゃ、ちゃん……おねがい。も、シて……はや、く」
「かわいい、アオ」
ようやく口に出せたおねだりに、都古の目が嬉しそうに細められた。
すぐに都古の紅く薄い唇が開かれ、物欲しそうに揺れていた箇所が食べられる。温かい咥内に収まる、それだけで視界がチカチカと白んでいく。
「あぁぁッ…ん、んんっ」
強すぎる刺激に、反射的に都古の頭を除けようとした手は、京介に絡め取られてしまう。自然と上がった甘い嬌声も彼のキスに覆われ、くぐもった声しか出せなくなった。
でも京介はそれ以上のことは仕掛けてこない。キスも葵をぐずぐずに乱すものではなく、声が外に漏れないようにする、その目的のためだけのもの。揺れる体を支える腕も、葵の弱い部分を弄ってはこない。
ともだちにシェアしよう!