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act.7昏迷ノスタルジア<93>*

「やッ、そこ……ん、あッ……あぁ」 他に意識を削がれないせいか、必然的に都古の口淫だけに意識が囚われる。朱色の紐に結ばれた黒髪が、橙色の明かりに照らされて揺らめく様はこんな時でも綺麗だと、そんなことを考えてしまう。 「みゃ、ちゃ……あ、あっ」 全体が丁寧に湿らされたあと、ゆっくりと上下に動き始めた都古の頭。その度に彼の紅い唇から見え隠れするもの。たっぷりと濡れていることを示すようにジュッと水っぽい音が響くのも、葵の羞恥を煽った。 「アオ、気持ちいい?」 葵の視線に気がついた都古が、一旦口を離し、問いかけてきた。葵の答えを待つあいだ、これ見よがしに濡れた先を唇で柔く啄んでくる。 全身が痺れ、蕩けるようなこの感覚を“気持ちいい”と表現することが正しいのか、葵にはまだ分からない。それでも、もう確認も、否定も、する余力は葵には残っていなかった。 「い、から……おねがい」 震える声でなんとか捻り出した葵の懇願に、都古からは満足そうな微笑みが返ってきた。 そしてもう一度、解放を待ち侘びる場所が都古の唇に消えていく。そこからはもう何も考えることが出来なかった。 「…………ッ」 奥まで深く飲み込まれ、きつく搾り取るように吸い上げられる。今までの愛撫がただの戯れだったと錯覚しそうなほど、強い愉悦。 「んっ、あ……っ、あぁぁッ」 吸われたまま、括れを舌先で抉られ、限界だった体はすぐに熱を弾けさせた。 ドロリとしたものが溢れ出てくる感覚はしたものの、京介に押さえられているせいで都古を引き剥がすことが出来ない。結局そのまま葵が吐き出したものを彼が嚥下するのが見えた。 橙のランプに照らされてもなお青白さを感じる彼の喉が、コクリと上下する。その光景にすら、背徳感で涙が溢れてくる。 全身を揺蕩う甘い余韻。息をすることも忘れ、ただぱくぱくと唇を戦慄かせていると、ようやく都古が顔を上げた。彼の唇がしっとりと濡れているのを目の当たりにするだけで、居た堪れない気持ちにさせられる。 それでもなんとか呼吸を落ち着けようとする葵に、ただ傍で見守っていた京介が信じられないことを言い出した。 「葵、まだ寝るなよ」 「なん、で」 瞼が重くなってきたことなど、京介にはお見通しらしい。分かっていて眠らせてくれないのはひどい。そう思ったが、彼が続けた言葉は葵をさらに驚かせた。 「一回じゃ足りねぇだろ?俺にもちゃんと可愛がらせて、葵」 ここ、と言って彼が示したのは質量を失ったばかりの場所。ベタベタに濡れたそこを、乾いた手で握り込まれるとまたすぐに妙な感覚が生まれてしまいそうだ。

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