983 / 1602
act.7昏迷ノスタルジア<94>*
「触ってねぇのにこっちも立ってるし」
「……ッ、だ、め」
京介がきゅっと摘んできたのは薄い胸を飾る突起。確かに一度も触れられていなかったはずのそこはほんのりと紅く色づいている。
彼の手を押しのけたいが、生憎全身から力の抜けた状態ではロクな抵抗もできない。口だけで拒否したとて、無意味に等しい。
「ほんとだ。寂し、かった?」
「あぁッ……ん、だめ、てば……みゃーちゃん」
都古までそこに興味を示してしまい、京介が触れていないほうに唇を寄せ、ペロリと舐め上げてくる。
舌先を尖らせ下から上へ爪弾かれると、ずっと刺激を欲しがっていたそこが硬く膨らんでいくのが見えた。
「おい、先に触らせてやったんだから、大人しくしてろ馬鹿猫」
「アオ、ダメ?」
「都古の我儘に惑わされんなよ、葵。こっち向きな」
京介は都古の悪戯を避けるように、葵の体を反転させ正面から抱き締めてくる。全身に彼の身に着けるスウェットの布地が当たり、自分が今一糸纏わぬ姿だと思い出させられた。
「京ちゃん……んっ、んん」
葵の声を抑え込むだけのさっきまでのキスとは違う。ずっと我慢していたと言わんばかりに性急に貪られ、熱が醒めたばかりの体がまた疼き出す。
「やッ……ん、あぁ」
京介に叱られたというのに、懲りずに葵の背後から忍び寄り、胸をくすぐってくる猫の存在も葵を困らせた。
「ここ、舐めたい」
気を許すとすぐに全身を舐めたがってくる都古らしく、本当は指ではなく舌で可愛がりたいのだと耳元で訴えてくる。
体が震えるのは、ツンと尖り始めた突起を撫でられるからだけじゃない。彼の舌に弄られ、吸われたことを思い出してしまったから。
「ほら、葵。これじゃまだ寝れねぇだろ」
「あっ、だって……さわ、るから……んんっ」
キスと胸への刺激。それだけで再び変化し始めていることを知らせるように、また京介がそこを握り込んでくる。
「あ、んッ……ヤダ、あぁぁ」
葵のものを簡単に包み込む大きな手。滲む蜜を全体に塗り広げるように上下に動かされるたび、ぐちゅりと恥ずかしい音が響く。口で弄ばれるのとは違う。思わず京介の肩にしがみつくと、彼はもう片方の手で宥めるように頭を撫でてくれる。
「葵、これだけ覚えてりゃいいよ。この痕が消えるまで、思い出すのは今日のことだけでいいから」
優しく扱く手はそのままに、京介がそんなことを囁いてくる。その言葉で、彼らの求めるものが何なのか、葵に何を与えたいのかがぼんやりと掴めた。
ともだちにシェアしよう!