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act.7昏迷ノスタルジア<108>
「……ッ」
相当驚いたのだろう。思わず上がりそうになった声を堪えるために、両手で口元を押さえる姿はまるで悪戯が見つかった子供のよう。幸樹は若葉たちに見つからないよう、彼を安全な場所まで誘導し、そして確認した。
「で、聖と爽どっち?」
区別のつかない幸樹に怒ったのか、それとも驚かされたことが不服なのか。彼はむくれた顔で“爽”だと答えてくれた。なるほど、言われてみれば確かに以前深夜のコンビニで出会った聖とはメッシュの位置が逆な気がする。
「何覗いてたん?あんなもん、見て楽しいもんちゃうやろ」
どう見ても若葉は未里から金を巻き上げ、ついでの暇つぶしとばかりに処理をさせていた様子。未里の頭を掴んでいたからきっと暴力的に彼の口を犯しているに違いない。
「まぁ高校生やし?興味は否定せんけど」
「やめてください、違いますよ。全然興味ないです」
「じゃあ何?」
大方想像はつくが、危険なことに首を突っ込もうとする一年生を黙って見過ごすわけにはいかない。彼が葵にとって大事な存在であるからだ。
「体育の帰りに九夜さん見つけて、誰か待ってる風だったからなんか気になって」
ジャージ姿の爽の説明に嘘はなさそうだ。でも昼食の時間を潰してまで若葉の近くで張っていた理由は気になる。確認すると、やはりあの夜都古が怒りを向けていた若葉がどんな人物かを知りたかったらしい。
「ああやって若葉の咥えたくなかったら、近づくのはやめとき。見かけても目合わせたらあかんよ」
もう若葉たちの姿を見ることは出来ない場所にはいるが、幸樹が顎でその方向を示して揶揄すれば、爽は不快そうに顔を歪めた。
「あの人、九夜さんとも繋がってるんすね」
「ん?福田?知ってんの?」
爽は若葉のことだけでなく、幸樹が後を追っていた未里のことも把握していたらしい。
「知ってるっていうか、まぁ、高山先輩のファンってことぐらいは……」
急に爽の歯切れが悪くなった。分かりやすく口ごもるあたり、幸樹に何かを打ち明けようと悩んでいるのかもしれない。
「隠してもいいことないで。話してみ?」
近くの木陰に腰を下ろし、隣をぽんと叩けば、彼は案外素直に従ってきた。
「あの福田さんて人、烏山先輩に絡んだ奴とセフレっぽいんすよ。ヤッてるとこ見ちゃって」
「……あぁ、そういうこと」
幸樹にとってはさして目新しい情報ではなかった。
奈央と繋がれない鬱憤を晴らしているのか、ただ単にセックスが好きなのか。なんにせよ、未里が校内で複数の相手と関係を結んでいることは知っていた。その相手の一人が、都古に喧嘩を売った相手だとしてもなんら不思議ではない。クズ同士、気でも合うのだろう。
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