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act.7昏迷ノスタルジア<131>

* * * * * * 家族全員が集まっても十分にゆとりのあるリビングが、今日はかなり手狭になりそうだ。学園生活で親しくしている皆が続々と揃い始めるのを眺めながら、葵はそんなことを思う。 どんな顔で数日ぶりの彼らとの対面を果たせばいいのか、昨晩悩み続けた挙句、結局答えは見つからなかったけれど、ただの杞憂だった。 綾瀬はいつもと変わらず涼しげな顔で、ほとんど前置きなく葵が引っかかっていた問題を教えてくれようとするし、七瀬はクラスで起きた出来事を面白おかしく葵に話して聞かせてくれる。 次にやってきたのが幸樹と爽という意外すぎる組み合わせだったことは、葵を随分驚かせた。聞けば近くで偶然出会ったわけではなく、学園から共に移動してきたのだという。手土産まで一緒に選んで。 さらに爽は、葵が半ば強引に引き合わせた小太郎とも、二人で昼食をとるぐらいには打ち解けた話をして葵を喜ばせた。これからもっともっと沢山友達を作って、楽しい毎日を送ってくれたらと、そう思う。 心残りは聖が居ないことだけれど、彼も本当はこの場に来たがっていたと爽が教えてくれたから寂しさは紛れてくれる。次に会えた時にフォローしてやってほしいと頼まれ、葵は力強く頷きを返した。 幸樹は今日の勉強会では教える側ではなく、試験に出そうな範囲を同級生に全力で教わる気でいると宣言してきて葵を笑わせた。厳しい友人たちはきっと幸樹が頼んでも言うことを聞いてくれないから、葵に一緒に頼んでくれるようねだってもきた。 以前とちっとも変わらない彼の態度は、少なからず気張っていた葵の心を解きほぐしてくれた。くしゃくしゃに髪を乱してくる大きな手も、葵を安心させる。 最後にやってきたのは、忍と櫻、そして奈央だった。 「めちゃくちゃ心配したんだから。葵ちゃんのバカ」 櫻は葵を抱き締めながらも、ストレートに叱ってきた。頬もきゅっと抓られる。でも痛みを感じるようなものではない。厳しい表情も浮かべていない。そこにあるのは、ただ優しく、美しい笑顔で。葵は自然と謝罪ではなく、彼の想いへの感謝を口にしていた。 「ちゃんと葵の分の仕事はとってある。山ほど残っているから、覚悟しろよ」 忍も生徒会を取り仕切る会長らしい台詞を口にするが、“早く戻ってこい”とも伝えてくれた。 「お前が居ないと何も進まない。困っているんだ」 自信家な彼には珍しく、弱気な言葉。でも、役員失格だと詰られてもおかしくないと構えていた葵には、最上級の温かいメッセージに思えた。 奈央は、櫻や忍とのやりとりをじっと見守ったあと、最後にそっと頭を撫でてくれた。特別な言葉はなかったけれど、生徒会の活動中、時折そうして葵を労ってくれたことを思い出して、目頭が熱くなる。奈央もどこか泣きそうな顔をしていたから余計かもしれない。

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