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act.7昏迷ノスタルジア<203>*
「京ちゃん、なに……?」
「大丈夫。怖くねぇから、力抜いとけ」
入口を十分すぎるほど濡らしてやってから舌を引き抜き、代わりに指を当てると葵はすぐに怯えた声を出した。でも京介の手の中ですっかり硬度を増したものを可愛がると、その声は途端に甘い喘ぎに変わる。
その隙に自身の唾液で濡らした指先を潜り込ませた。
「ぅ……、っ、あ……、んん……」
少し引き攣れるような感覚はあるが、声からは痛みを感じている様子はない。ただ異物感には襲われているようで、ブランケットを掴む葵の手が強く握り締められるのが見える。
ここでも葵が快楽を得られるように導いてやらねばならないのは分かっている。でも京介だって誰かの体を開くのは初めてのこと。手探り状態ではある。
少しだけ硬さを失った先端を指の腹でさすってやればとろみのある蜜が溢れてくるが、葵からは緊張の色が消えない。咥え込んだ京介の指も、それ以上の動きを嫌がるようにきつく締め付けたまま。
それでも根気よく内壁を指先で弄ると、以前見つけた箇所に辿り着いた。
「あっ、あっ……、んんっ!」
「ここ?気持ちいい?」
入り口から数センチ潜った腹側の粘膜を擦ると、声色が明らかに変わった。葵の腰が京介の指から逃げようとするが、もう片方の手に捕らえている人質を揉み込めば抵抗は簡単に封じられる。
「ンッ、あっ、ダメ……、あぁぁっ」
他とは違う、少ししこったような感触のそこを小刻みに揺さぶってやると、前から溢れる蜜の量も増えていく。
さらに性感を煽るように揺れる腰に口付け、京介の指を飲み込む窄まりの縁や、会陰に舌を這わす。一ノ瀬が触れたであろう全ての場所を京介の感覚に塗り替えてやるように。
葵の姿を見て、肌に触れて、京介自身も高ぶってはいたが、前回と同じく今夜もその欲望をぶつけるつもりはなかった。だからひたすら葵がこのまま絶頂を迎えられるように努める。
しかし、もう少しで達するだろうと予測した矢先に、ブランケット越しにくぐもった嗚咽が漏れ聞こえてくることに気が付いた。嬌声ではない。
「きょ、ちゃ……こわい、これ、こわい」
「どうした?」
「暗いの、やだ。先生、が」
途切れ途切れで要領は得ないが、葵が一ノ瀬との記憶をフラッシュバックさせていることは察した。
台の上で四つん這いになるような形で手足を拘束されていたというから、確かに今の状態とは似ている。でもこの姿勢を選んだのも、布を被って光を遮ったのも葵自身だ。
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