1213 / 1603

act.8月虹ワルツ<111>*

「アオ、こわく、ないから」 そう囁きながら、都古は最大限の慎重さで葵の肌に指を這わせる。都古にとって葵は宝物。何よりも大切に触れるべき存在だ。 腰に回した手を少しずつ移動させて行き着く先は葵のウエストを締めるリボン。都古が手を動かすまでもなく、そこはすでに解かれた状態になっていた。昨夜京介が手を出した名残なのだろう。 嫉妬が溢れてきそうになるけれど、今は都古の感情を押し付ける時間ではない。葵の体を癒してやるのが目的。だから都古は今までと変わらぬ手つきで、パジャマの中へと侵入を試みた。 下着越しに触れたそこは、すでに緩く芯の通った状態だった。ここまで育ってしまえば、仮に今目覚めても葵にはどうしようもないだろう。自然に治るのを待つしか手段がないのだから。 「アオ、していい?」 「……ん」 様子を伺うように指先で突きながら確認を取ると、さすがに刺激が強かったのか葵は小さく身悶えた。都古の問いに頷いたようにも見えるその仕草は、まだ僅かに残っていた都古の迷いを完全に吹き飛ばしてくれた。 下着の上から膨らみの輪郭をなぞるようにさすっていく。そんな僅かな刺激だけでグッと硬度が増すのを感じる。触れられるのを待っていたかのような素直な反応は、都古を喜ばせた。 「ぁ、ん……んッ」 特に敏感な先端部分を擦ってやると、甘い吐息が溢れ始める。嬌声と呼ぶには控えめなものだが、都古を煽るには十分すぎた。 「可愛い、アオ」 意識がある状態なら、こんな布越しの緩い愛撫でも逃げたがる葵。でも今はただ素直に都古の指先に翻弄され、悶えてくれる。起きている時もこのぐらい身を委ねてくれたらいいのにと思わないでもないが、涙を溢すほど恥ずかしがるウブさも捨てがたい。 全体を優しく撫で、時折鈴口の位置を爪で掠めてやる。戯れ程度にしか触れずとも、先走りの蜜が下着を濡らし始めるのにはそれほど時間が掛からなかった。 もっと確かな刺激を欲しがるように葵の唇がぱくぱくと戦慄く。それを合図に、都古はようやく下着の中へと指を滑らせていく。 下腹部の肌も火照りを感じたが、それ以上に熱を持ったそこを優しく握り込む。するとまるでそうされるのを待ち侘びていたかのようにぴくりと震え、新たな蜜が都古の指を濡らす。静かな寝室で、くちゅりという水っぽい音がやけに響くように感じた。 「気持ちいい?」 返答はもちろんないけれど、表情を見れば答えは明らかだった。 勉強は不得意だが、どう触れられたら葵が悦ぶかの知識には自信がある。こうして手で触れるよりも、口淫のほうがより可愛い反応をするのも知っていた。けれど、いつ京介が帰ってくるか分からない状況では、手で満足してもらうしかない。 じわりと蜜の滲む先端を親指で拭い、その滑りを全体に広げるように撫でていく。そのたびに葵は腰を跳ねさせるが、直接的な刺激から逃げたがるというよりも、もっと深い快楽をねだるような動きに見えてしまう。 都古は己の手がしっとりと濡れそぼるのを待って、戯れの範囲だった愛撫をより強いものへと変化させていく。 「……あッ、ん……ん」 小ぶりな葵に沿うように指で輪を作り、根本から先へと扱きあげると、葵からは切羽詰まった声が上がり始めた。与えられる快楽をされるがまま受け入れている状態では、覚醒している時以上に絶頂に向かうのが早くなるようだ。 「いいよ、アオ」 都古は意識のない葵にそう囁きながら、敏感な括れ部分を指の腹で強く摩ってやる。すると一瞬の間を置いて、葵の体がぴくりと痙攣した。同時に溢れるとろりとした粘液は、きちんと手の平で受け止める。 絶頂の余韻に浸る体がより一層過敏になることも、都古は知っている。だから都古が下着から手を引き抜く振動や、目元に滲む涙を拭うために落としたキスにすら反応して震える葵に驚きはしない。けれど、そんな可愛い仕草をされては、更に触れたくなってしまう。 湧き上がる衝動を堪えるように唇を噛んだ都古はわずかにしか乱れていない葵のパジャマを正し、リボンもきつく結び直してやった。

ともだちにシェアしよう!