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act.8月虹ワルツ<277>*
リビングスペースも寝室同様、広さの割に大したものが置かれていなかった。ソファやテーブルはあるが、本棚はスカスカで文庫本や参考書が数える程しか並んでいない。特にダンボールも見当たらないことから、荷解きが終わっていないわけではなく、元々私物が少ないのだと察する。
洗面台にあった日焼け止めのクリームを取って寝室に戻ると、葵は失った温もりを求めるようにまた手を宙に彷徨わせていた。でもその手を取ってやることはせず、下着ごとパジャマのズボンを引きずり下ろす。さすがに目覚めると思ったが、葵はそれでも瞼を閉じたままだった。
「ハハ、マジでガキだな」
露わになった下腹部の肌はつるりとしていて、色も他の肌と大差ないほど白い。徹が嫌悪感なく咥えたのも頷けるほど楚々としている。
「……ぁ、んッ」
日頃の行為中に相手の陰茎を触ってやることなどなかったが、これほど幼い箇所がどう反応するかも興味が湧く。根本から先までツッとなぞってやると、葵はその刺激から逃れるように身じろぎをする。それを数度繰り返すと、葵の唇から漏れる吐息が明らかに熱っぽいものになってきた。
それにこんな些細な刺激だけでも、一丁前にぴくんと勃ち上がっていくのも分かる。白い包皮から顔を覗かせた桃色の先端をなぞるとその傾向が一層際立つ。
「んぅ……ッ、あ」
「全然起きねぇなコイツ。なんかの病気か?」
ここまで体を弄られても、葵は腰を揺らすぐらいでちっとも瞼を開かない。異常をきたしていると考えるほうが理解しやすい。目立った反応が見られないのはつまらないが、また“パパ”なんて呼んできたり、泣きつかれたりするよりはマシだ。
葵の膝を掬って割り開くと現れた狭間にも、一ノ瀬の痕跡らしきものがまだ残っていた。よほど強い力で吸い付かれたことに加え、痕が残りやすいほど薄い皮膚をしているのも原因かもしれない。
キャップを開いて日焼け止めのクリームを直接窄まりに垂らすと、その冷たさにクンと腰が跳ねる。それ用のジェルに比べれば粘着性に欠けるが、伸びは悪くない。
たっぷりとクリームで濡らした後孔に指の腹を当て、葵の呼吸に合わせてつぷりと侵入させる。体温で溶けたクリームのぬめりのおかげで関節一つ分ぐらいは潜り込ませられたが、それ以上を拒むようにギュッと固く力が込められてしまった。
でもその反応は若葉を躊躇わせるどころか、一層煽る。それなりの質量がある若葉の指を飲み込んで苦しげに広がる縁を目の当たりにすると、さらに太いものを咥えさせたくなって仕方なくなるのだ。
欲望のままにチューブから絞り出したクリームを足した時だった。再度ポケットの中の携帯から振動が伝わる。すぐに鳴り止まないということは、メッセージの着信ではなく、電話のようだ。
葵の中を弄る手は止めずに、利き手ではない手で器用に取り出した携帯の通話ボタンを押した。
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