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act.8月虹ワルツ<409>*
抗議の意味も込めて都古の浴衣を引っ張れば、彼は体をずらして再びキスを落としてくれる。口内の唾液を混ぜるように舌は這いまわり、そしてくちゅりと音を立てて出て行った。
「ちが、そうじゃ、なくて」
体がもう一段階深い疼きに落とされる。それを誤魔化すように腰を揺すれば、下着の中で張り詰めたものの存在を自覚させられて余計に葵を困らせた。とうとう涙を溢すと、ようやく都古が助け舟を出してくれる。
「ここ、欲しい?」
「んあっ、あ……ッ」
都古がシャツ越しにツンと胸の尖りを突いてきた。その一瞬の刺激にすら、自分でも驚くほどに背が跳ねる。これ以上半端な状態が続くのは辛くて堪らない。媚びるように頷けば、都古はこれで遠慮はいらないとばかりにそこを口に含んだ。
「ひァ……あ、待ッ……んん」
葵の舌を絡め取った時のように、都古の唇が葵の胸を吸い上げ、捏ねてくる。もう片方も、キュッと摘まれる。そのどちらも布越しでの刺激。直接触れられるわけではないのに焦らされた体には強すぎるものだった。
耐えきれずに首を振ると、都古は何を取り違えたのか、唇を落とす場所を左から右へとずらしてきた。そしてさっきまで舌先で苛められていたおかげでシャツがぴたりと張り付くそこを、爪でクリクリと追い立ててくる。
葵が脱ぎたがらなかったから。だからこのまま布越しに責め続けるつもりだと察してまた涙が溢れる。
「あっ、ん……、あぁっ!」
ジュっと音を立てて吸われるたびに、触れられていないはずの下着がしとどに濡れていく感覚がする。このままではまずいことになる。頭の中で警鐘が鳴り始めるのに、都古の浴衣を掴む手には力も入らず、口を開けば意図しない声ばかりが上がる。
「やぁッ…だ、め……待って」
否が応でも跳ねる腰は、都古が伸し掛かることで押さえつけられる。そのせいで昂った場所を都古の腹に擦り付けるような真似をしてしまう。恥ずかしいことをしている。それは分かっているのに、舌や指先で弱い部分を苛められるとどうしても止められない。
「アオ、可愛い」
「……ん、んッ…あぁぁッ」
自分の何もかもを制御出来なくなっている姿のどこが可愛いのかさっぱり理解できない。
でも都古は嬉しそうに笑いながら、ダメ押しとばかりに尖らせた舌先でもうすっかり育ち切った胸の粒を抉ってきた。つるりとした布地が一際強く擦られたその瞬間、何かが弾け出す。その正体は、少しの間を置いて下着に染みが広がる不快な感覚で理解できた。
粗相をした。居た堪れない事実に、葵は両手で顔を覆って都古の視線を拒む。
不可抗力と言ってもいいかもしれないが、葵が望んだことでもある。それが何よりも居た堪れなかった。幸樹と温室で過ごした時のように意識を飛ばせてしまったら良かったのに。
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