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act.8月虹ワルツ<412>*

「ここにも、垂れてる」 葵の膝をクッと押し上げ、尻が天井を向くような姿勢を取らされる。性器以上に人に晒すはずもない場所。明るい室内でまじまじと見られるなんて耐え難い仕打ちだ。 「ァ、や……見ない、で」 「なんで?可愛い」 都古の言葉に葵をからかう色は全くない。だからこそ困るのだ。 都古は葵のどこもかしこもを本気で可愛いと言って舐めたがる。頬や唇へのキスなら愛情表現として葵だって喜んで受け入れてきたが、初めてそこを舐めたいと言われた時は愕然としたものだ。 それに登校を再開する前の最後の夜。京介にそこを触られた際、一ノ瀬の記憶を蘇らせ、取り乱してしまった。またあんな風に泣き出してしまったら、きっと都古に心配をかけてしまう。 さらに浮かぶのは屋上での若葉のこと。連れ添っていた生徒のそこに若葉が何を突き立てていたか。未知の領域すぎて、葵にはただ怖い記憶ばかりが植え付けられてしまっていた。 「ほんとに、だめ」 「こわい?」 「……そうじゃ、なくて」 言葉では簡単に説明出来ない感情だった。そもそもどうしてそんな所を喜び勇んで触れたがるのかが分からない。説明を求めたいのは葵だって同じだけれど、きっと都古はご褒美とか消毒とかマーキングとか、そういった類のことしか言ってくれないのは予測できた。 「こわいこと、したことある?俺が、アオに」 「ないよ?ないけど」 葵の答えた方で、恐怖を見出していることは察したのだろう。都古は宥めるように内腿を啄みながら、尋ねてくる。 都古は葵を何より大切にしてくれる。乱暴に触れられたことなど一度だってない。でもだからといって、それがどうしてあんな場所を舐めさせることに繋がるのか。でもこんな応酬で折れるのはいつだって葵だった。 好きだと囁かれ、少し元気を失くした性器に舌を巻きつけられ、ひたすら甘ったるく可愛がられるとまたズクズクと思考が解けていく。 恐怖を上書きしてあげたい。根気よく諭されて、葵はまた無意識に首を縦に振っていた。 まだうっすらと傷跡の残る性器の付け根を労わるように丁寧に舐め上げたあと、都古は舌先を狭間の奥へと滑らせていく。 「んッ、ん…ぁ、や……そ、こ」 「可愛い」 そこが都古の目にどう映っているかなんて想像したくないのに、都古はどこかうっとりとした様子で“可愛い”と“大丈夫”を繰り返しては、チュッと音を立ててキスを与えてくる。 普段自分ですらまともに触れない場所に愛撫が施されるたびに体がびくつくけれど、都古は延々とその行為を続けた。怖くないと葵に覚え込ませるように。 不思議なもので、あれだけ抵抗があったはずなのに、時間が経てば経つほど後孔からじわじわと熱が広がっていく感覚がしてくる。 「なん、で……ん、変…ちが」 おかしい。信じたくない。泣きじゃくりながら訴えると、都古はぴたりと動きを止めて葵の顔を覗き込む体勢をとった。

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