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3、ニ択

ガチャリと鍵を内から掛けるや否や部屋の中にある別の扉に連行される。 別に拘束されている訳では無いが、細長く綺麗なラインを描く人差し指の先から流れる青い閃光を見て、逆らう気など起きる筈も無い。 それでも開かれた扉の先に見えた光景に足がすくんでしまい、足で蹴飛ばされて転がり堕ちるようにしてその部屋に入った。 ぃたい……なんかこの人さっきから足癖悪く無い? 足跡がしっかり付いたであろう背中を擦りながら起き上がる。 その部屋は見渡す限り鞭やら鎖やら鉄の機材やら……どう考えても拷問する場所にしか見えない。 やっぱり助けてくれた訳じゃない。 そう改めて突き付けられて絶望する。 「あの、拷問されなくてもちゃんと言いますからっ!」 かくなる上は先手必勝、いや勝てはしないけどせめて無駄に痛い思いなどしたくないのでひたすら順従アピールである。 すがるように上目遣いで頼み込むと、これ見よがしに溜め息をつかれた。 「はぁ…別に此処は拷問部屋などではありません。」 「ふぇ、そうなの?じゃあ宰相様はそういうシュミがおあり……?そういえばさっきの奴もそれっぽいといえばそうだし……ぅわあ引く。」 嗜虐趣味ってゆーんだよね? 「聞こえてますよ。そんなに私を煽りたいならお望み通り鞭でも火炙りでも三角木馬でも使って差し上げましょうか?」 ニッコリと微笑むそのお顔はやはり女神のように美しいのに言ってる内容はエグい。 ぅえ!?心の声漏れちゃってた!? ガバッと口を両手で押さえるがもう遅い。 「ごめんなさいほんの冗談です勘弁して下さいっ!!!」 元々直ぐ思った事口に出しちゃう性だから、魔力が有ったときは都合が悪い言葉は聞こえないようにとか魔術で調整してたんだよね。もう使えないのに癖でついやっちゃった……。 「…まぁ良いでしょう。それで、何が目的で宮殿のそれも私の部屋の前の壁に張り付いていたんです?(まぁ言わなくても大体想像は付きますが。)」 ドッカリと部屋に置かれた黒いソファーの真ん中に長い御足を組んで座った宰相様の視線にただされてその正面にセリクは正座する。 「えー、あの、”鍵”をちょっと借りようと思いまして……。」 真っ直ぐに向けられた底の見えない黒い瞳に、これは嘘は付けないと直感し単刀直入に質問に答える。 「この愚か者。」 ……バッサリと切り捨てられてしまっては話を続けようが無いのですが。 どうしたものかと俯いていると、顔を上げなさいとピシャリと言われる。 「それで?それだけでしたら即刻窃盗罪及び最上位貴族の特権で私は貴方を灰にして終わりですが。」 「っでも、そもそも僕は嵌められて禁域に入ってしまった訳でっそれで魔力剥奪なんておかしいんです!!」 「それに証拠はありますか?有ったとしても禁忌を犯した事に変わりはありませんし、盗みを働いて良いなどという理屈は通りませんよ。」 「だけどっ、こんなの……酷い!」 「感情論は要りません。如何なる理由が有ろうともあの時点で魔力剥奪は当然の報いです。」 っそんな事言われたって、納得出来ないものはしょうがない。 僕はただ渡された課題をこなしただけなのに。 試験中だから誰かに聞くことも出来なかったし、他にどうしようも無かった。 ……でもこの人の心を動かせる気も全くしない。 どうすれば良いのか全く分からず、絶望という二文字しか頭には浮かばない。 「………。」 「はぁ…だからつけこまれるのです。お前は甘いんです。そんな者に本来ならばこの私が直々に交渉などしないんですがね。」 「……?」 交渉? 「お前が嵌められた可能性は私も高いと考えておりますし、結果として罪を犯したとは言え禁忌の森への空間移動魔法などという空恐ろしい程の技術力と発想力を要する魔術を生成したお前を殺すのは、同じ魔術師として少々惜しいと考えています。」 ……。 一気に捲し立てられた言葉を混乱した頭がゆっくりと咀嚼し整理してゆく。 「それって__」 「但し、魔法に関する能力は認めるとしても今回のようなその浅はかな行動力は全く使い物にならない所か有害でしかありません。__よって、お前に選択肢を与えましょう。」 「選択肢?」 フゥッと一息をつくと、宰相様はあの全てを見透かすような赤い瞳で僕の瞳を絡めとった。 「今ここで私に殺されるか、戸籍上消滅するか__選びなさい。」
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