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10、黒猫
ふぁあ……
瞼の裏が明るくて、胸の辺りがスースする。
そんな違和感を感じて目が覚める。
一番最初に見えたのは、見覚えの無い真っ白な天井。
……あれ?
学校の寮はこんなじゃない………そうだ、退学になったんだ、、じゃあそれから暫く泊まっていた安宿の天井?……違う、、えっと、あれからどうしたんだっけ……。
起きたばかりでスムーズに働かない頭でぼんやりと記憶を辿っていく。
そして此処はファサイル様の寝室だと思い出した瞬間ガバッと起き上がる。
「○△#☆%□◎~!!!」
バスローブの前ははだけられていて、胸の違和感はファサイル様の手によるものだった
「朝っぱらから五月蝿いですよ。」
「な、な、な、なっ…」
「ああ、これですか?気持ち悪そうでしたからタオルで汗を拭いて差し上げているだけですが。」
何を勘違いしているのです?と睨まれ、漸く看病しくれていたのだと気づく。
「あ、ありがとうございますっ、でもこんな事までしなくても結構ですから!!」
これではどちらがご主人様か分からない。
「別に貴方の為ではなく貴方の寝汗の所以で私のベッドが汚れるのが嫌なだけですから。」
…………ツンデレ?
「もう退きますからっ!」
冷やされた濡れタオルで拭いてもらうのは確かに気持ちいいが、バスローブしか羽織っていなかった自分の今の状況は真っ裸同然であり、いくら男同士でも恥ずかしすぎる。
ぴょんっとベッドから飛び降りてはだけられていたバスローブの紐を括る。
「一日中その格好でいるつもりなんですか?着替えは用意させていますからそっちに着替えなさい。」
呆れるようにそう言われると居たたまれない。
ワタワタと動揺していると、何処からともなくスィッと衣類を差し出された。
「うわっ!」
いつの間にか僕の真横に衣類を抱えた少年が佇んでいたのだ。
「あ、ありがと……。」
無言で差し出されたそれを戸惑いながらも受け取る。
全然気配が無かったんだけど。。
「き、君もファサイル様の奴隷なの?」
着替えながら聞くと、代わりにファサイル様が説明する。
「彼はサミーウ、うちの奴隷の中では一番前と年は近いので喋りやすいのではないですか?」
サミーウ……。
改めてまじまじと見る。
黒猫を連想させる漆黒の髪とパッチリとしたつり目。真っ白で細い手足とおかっぱ頭は幼い印象を与えるが、身長から考えても僕より2、3歳下ではないだろうか。
人見知りなのか、さっきから喋らない。
「僕はラヒーム、宜しくね!」
ニッコリと笑いかけてみるとコクリと頷いてくれた。
……何だろう、可愛い。
普通こういう返事は無愛想な印象を与えるが、この子の場合は小動物のようで愛らしさしか感じない。
なんだか無性に抱き締めたくなる。
無意識に手を伸ばすと、フイッと避けられた。
「あ、握手、握手しよっ!」
ほらっともう一度手を伸ばすもやはりスルリとよけられる。
むぅ~!
「触ろうとしても貴方には無理ですよ。身体能力が違います。」
へ?こんな細い子が?
嘘だ、と思い今度は本気で捕まえにいくように飛び出す。
が、ヒラリとかわされ見事に地面にダイブしてしまった。
「った~!!!!」
鼻打っちゃったじゃん!
「遊んでないで早く着替えなさい。あとこの子は口をきけませんし耳も聞こえませんから。」
え?
喋れないし、聞こえない……?
衝撃的な告白に、思わず言葉を失った。
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