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23、準備①*

「さて、初めましょうか。」 寝室に運ばれてきた一人分の夕食を食べ終えたところでそう声を掛けられる。 ちょっとでも先延ばしにしたくて出来る限りゆっくりたくさん咀嚼していたが、とうとう全部平らげてしまった。 「……ちょっとガッツキ過ぎじゃないですか?」 ハマムで散々な弄ばれたんだから今日くらい勘弁してほしい、というのはワガママだろうか。 「心配せずともいきなり挿れたりしませんよ。」 「いれるって?」 何を? キョトンとした顔で聞き返したラヒームを見て、おや、とファサイルが片眉を上げる。 「知りませんでしたか?同性同士の性交渉はココでやるんですよ。」 「わっ!」 グイッと引っ張られてベッドサイドに座るファサイル様の膝に倒れこむと、必然的に目の前に来たお尻をスルリと撫でられた。 いや、お尻というにはピンポイント過ぎる場所を。 「え……?」 ソコって……え、嘘でしょ……?だって排泄するところ……。 「本当に知らなかったみたいですね。しかし少し考えれば分かるでしょう?女性と違って男性の穴は一つしかないのですから。」 「ほ、ホントに……?無理じゃない?物理的に。」 いや、排泄の事考えたら不可能では無い……のか? 「訓練すれば問題ありません。流石に今のお前にいきなりやったら裂けるでしょうから今日は慣らすだけですが。」 「……。」 慣らすだけ。 ちょっとだけ安心するものの、「今日は」という言葉が怖すぎる。 それに訓練て……痛辛いのワードしか連想できないんですけど。 取り敢えず、初夜のベッドの上での言葉としては余りにも不釣り合いすぎるよそれ。 ビクビクと怯える僕に気付いたのか、ファサイル様はが安心させるように頭を撫でる。 「そんなに身を固くせずとも、お前が私の言う事を確りと聞けば痛いことなど何もしませんよ。」 「条件付きの安寧なんて何の安心にもならないんですけど。」 「犬でも出来る命令しかしませんよ。私に全て身を兼ねる、それだけですから。」 「はあ。」 首をひねって伺うと余裕の笑みを浮かべていらっしゃる。 経験豊富ではあるんだろうなぁ。 「っ」 そんな事をぼんやり考えていると、徐にズボンを下げられた。 初夏と言えども夜の気温は低く、露出された素肌が冷気に触れてピクリと体が身動ぐ。 あ、ホントにこれからヤられるんだ。 今更ながら実感が湧いて来る。 「この体勢でも私は構いませんが、苦しいですか?」 「大丈夫、です。」 食後ですしね、と気遣う声に少し硬いながらも返事をする。 未知の行為は怖いけど膝の上が妙に安心するのは、ファサイル様がこういう気遣いを出来る人だからなのかもしれない。 「本当に大丈夫ですか?四つん這いでも良いんですよ?」 「余計に嫌です!」 悪い人じゃないけど、そういえばドSでド変態だった……。 「滑抽液を垂らしますからね?」 でもちゃんとこうやって使う前に目の前に持ってきて説明してくれる辺り良い人……ていうか几帳面なんだよなぁ。 「って、それローズウォーターですよね?」 薔薇で作るローズウォーターは村でも納税の一部として作ってたから、匂いでわかる。 高価なモノだし使わせて貰った事無いけどね。 「ええ、それに少し手を加えてオイルにしたものです。」 ほぇー、まあ自然物だし安全だもんね。 でもローズウォーター初体験が化粧水としてじゃなくてこんな事でなんて、何か複雑だ……。

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