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25、玩具*

「__何ソレ?」 にこやかな表情でズイッと目の前に出された代物に目が点になる。 突き出て無い十字架がぐにゃっと曲がったような形、とでも言えば良いだろうか 、不思議な形状をしたソレは僕が知る何にも似つかない未知のものだ。 「エネマグラと言って、元はサボンジュール殿が開発された医療機器だそうですよ?用途は前立腺肥大症などの患者に使う前立腺マッサージ器といったところですね。」 「……それって確か、高齢の方に多い前立腺が肥大して便が出にくくなるヤツですよね?」 「ええ、流石によく知っていますね。」 命に関わるような病気じゃないけど誰でも起こり得る地味に辛い症状。 授業で習うような病気では無いけど、サボンジュール様直筆の最新病例一覧書に載っていた。 「でもそれ用の機器があったなんて初耳です。」 というか何でそんなものを今出してきたワケ? 「実用化されたのはつい最近ですし、殆ど本来の目的で使用されていませんしね。」 「え?」 「大人の玩具、とでも言いましょうか。色欲を満たす為の道具が今貴族の間で流行っているんですよ。」 ……は? 「バッカじゃないですか!?」 そんな下世話な玩具が流行ってるって……しかもそれを大宰相ともあろう御方が嬉々として持ってるとか……!! 「サボンジュール様への冒涜ですよそれっ!!医療機器をそんな、そんな玩具に使用するなんて!」 許せない! そんなモノを買い漁る腐れ貴族共も、 金儲けに利用したどこぞの変態商人も! 「「大人の玩具」なるものを最初に貴族の間で流通させたのは、他でもないサボンジュール様ですよ?」 「………………………………………………へ?」 サボンジュール様が……?いや、あり得ないよそんな事。生ける医術の神様 が……。 「立派なビジネスですよ、ビジネス。子供のお前にとってどんなに下らなかろうが、常に困窮状態の医術学者達にとって、金を持っている貴族に需要が有ればそれは金儲けのチャンスでしょう?」 「………。」 「サボンジュール殿もその弟子のカースィム殿も国の予算が下りない個人の研究費用の小遣い稼ぎに、こういった商品を開発する事を奨励していますからね。」 流石に大々的には出来ないですけど、このアイデアのお陰でかなり医術学府は潤いましたよ、と大真面目に語るファサイル様。 「そんなぁっ。。」 ……僕の医術学者達への崇高な理想像が、ガラガラと崩れ落ちる音を確かに聞いた。 全部正論だけどさ、でもさ、、知りたく無さすぎた現実だよ。 「気持ちは分からないでもありませんが、本当に良いビジネスなんですよ?公に売れない分希少価値が高くていくらでもぼったくれますからね。」 フフフ、と黒い笑みを浮かべるファサイル様。 「あああ……。」 社会の黒さを垣間見た気がするのは気のせいでは無いだろう。 「話が逸れてしまいましたね。兎に角これはそういうモノですから、これかどうするかは分かりますよね?」 「あ゛……。」 そういえばそういう時間だった、今。 「む、無理ですよ!こんな大きいの!!」 「エネマグラの中でもこれが一番小さいサイズですよ?指2本分くらいの太さしか無いでしょう?」 一番小さくてコレ!? いや、確かに指とそんなに変わらないかもしれないけど、無機物を体内に挿れるという時点で生理的に無理である。 「他でもないお前の尊敬するサボンジュール殿が開発したモノですよ?何か不具合があるとでも?」 それこそサボンジュール殿への冒涜ですね、と笑うこの御方は相当性根が腐ってると思う。 ……だって、そんな事言われたら何も文句言えないじゃん!!

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