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33、下働き

カンレンボク、ストロファンツス、ベラドンナ……えっとこれは……。 書物の中の知識はあるけれど、実際見るのは初めてな薬草が多く、判別が難しい。 それでもカースィム様に丁寧に教えて貰ったお陰でだいぶ慣れてきた。 机の上に山積みされていた薬草は、残すところ10本くらいだ。 「ん、もう直ぐ終わりそうだね。僕ももう少ししたら一段落着きそうだし分類出来たら一緒にお茶にしようか。」 ひょい、とラヒームの肩から机を覗いたカースィムがそう言った。 「あっはい!」 もう少ししたら、と言いつつ先程まで使っていたスポイトやビーカーを片付け始めたカースィム様が視界に入り、慌てて分別を進める。 えっと、これベラドンナだし、そっちは……。 急ぎつつも間違わないようしっかり確認しながら薬草を分け、それから数分で終わる事が出来た。 「カースィム様、お待たせ致しました!」 「良いよ、こっちも終わったところだから。あっちに洗面所があるからよく手を洗って来なさい。」 「はい!」 触るとかぶれる草もあったから手袋を貸して貰っていたが、実験室に居る限り手洗いは絶対だ。 上等そうな石鹸で少し気後れしそうになったが、有り難く使わせて貰った。 洗い終わったらカースィム様が待つベランダに小走りで向かう。 「お疲れさまー。ファサイルの所には負けちゃうけど、此処のお菓子も中々美味だから食べてね。」 「え、良いんですか?」 「もちろん。」 ニッコリと微笑んで紅茶を差し出すカースィム様に思わず聞き返す。 ……ドレイなのに、待遇良すぎない? ファサイル様にしてもカースィム様にしても、太っ腹過ぎて自分が奴隷だという事を忘れそうだ。 僕のイメージでは奴隷と言えば、食事は水みたいなスープだけとか、ボロ雑巾のような服とか、もっとこう悲惨な感じなのだが。 「遠慮しないで座って。」 「はあ……。」 断る理由も無いのでカースィム様の向かいの席に腰を降ろし、使用人らしき人に紅茶を注いで貰う。 「どうしたの?腑に落ちないような顔して。」 「いや、えっと…ファサイル様もカースィム様も凄く親切に接して下さるのが不思議で……。」 もしかして都ではこれが普通なのか。 「あー、まあ他所の国の人はびっくりするよね。」 「よそ…」 生まれも育ちも此処だけど……。 合法な手続きで成る奴隷……要は聖戦で負けた国の人が成る奴隷では無いのだが、そう勘違いされたようだ。 それならその方が都合が良いし…… そう思って首を縦に振ろうとした瞬間、 「あれ、もしかして違法なほう?」 キョトンとした顔で尋ねられ、ビクンと肩を震わせる。 ああっ、バカ!折角勘違いしてくれそうだったのに直ぐ答え無いからっ。 一瞬前の自分を激しく呪う。 どうしよう、これを元に正体暴かれたら……… 次は追放などでは済まされない___ パニックに陥ったラヒームは言い訳も考えられず、ただぎゅっと目を瞑った。

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