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第10話

広い浴室の中で、二人は並んで体を洗った。 シャワーで頭を流しながら、日和はタオルで隠したままの自分の下半身を見つめる。 意識するなと思えば思うほど、そこは熱を帯びてしまう。 後ろから芹沢が湯船に入る音が聞こえて、はっとシャワーを止めた。 タオルをぎゅっと握りしめ、そうっと湯船に沈むと、芹沢が気持ち良さそうに話しかけてくる。 「修学旅行みたいだな」 「うん、そうだね」 ちょうどいい温度で、体がほっと温まる。けれど横にいる芹沢に反応する、自分の体の状態に、日和は気が気ではない。 中学の修学旅行の時は、こんなに緊張しただろうか。既に自分の性対象については自覚していたけれど、皆で騒いで終わった気がする。二人きりっていうのが駄目なのだろうか。 「小春?大丈夫か?顔赤いけど」 芹沢がこちらを覗きこんでくる。水が艶やかな黒髪から滴って、頬から首筋に流れていく。きりっとした眉に、真っ直ぐな瞳、すっと通った鼻筋。薄い上唇と、厚みのある下唇、そこから発せられる、甘さを含んだ中低音の声。 芹沢だから、なんだ。日和ははっきりと自覚する。こんな風に動揺するのは、芹沢だから。次の瞬間、腕を何かにぎゅっと掴まれた。 「小春?おい!小春……!」 芹沢の焦った声が段々と遠くへ向かう。 日和はいつの間にか意識を失っていた。

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