11 / 18
第11話
最初に目に飛び込んできたのは、白い天井。それから芹沢の心配そうな顔に、ピントがあった。
「あれ?……俺、」
「小春!」
現状が把握できず、体を起こそうとするとくらくらとした。芹沢が体を支えてくれる。
「気がついたかな?」
扉が開いた方に目をやると、眼鏡の落ち着いた雰囲気の青年が入ってきた。
「はい。まだふらついてるみたいなので、もう少し休ませてもいいですか?」
「うん、大丈夫だよ。出るときに消灯して、この鍵を僕の部屋まで持ってきてもらえる?101号室だから」
「はい。ありがとうございます。秦野先輩」
芹沢は立ち上がり、お辞儀をする。日和もベッドで上半身を起こした上体で、軽く会釈をした。
扉が閉まり、芹沢はベッドの横の椅子に腰かけた。
「そういうわけだから、まだ休んでて大丈夫だよ」
「俺、風呂場で倒れたのかな?」
「そう、のぼせたみたいだな。湯船に入ってるときだから、頭打ったりはしてないけど。大事がなくてよかった」
芹沢が安心したように微笑む。日和は申し訳なさに俯いた。
「芹沢が運んでくれたのか?ごめんな、迷惑かけて」
「大丈夫だよ。それより、俺がいるときでよかった。これからも、風呂のときは気を付けてな?」
「うん、ありがとう」
恥ずかしさと情けなさで、芹沢の顔を直接見ることができない。芹沢は、まだ体調が優れないと勘違いしたのか、優しく日和の頭を撫でてくれた。
ともだちにシェアしよう!