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第11話

最初に目に飛び込んできたのは、白い天井。それから芹沢の心配そうな顔に、ピントがあった。 「あれ?……俺、」 「小春!」 現状が把握できず、体を起こそうとするとくらくらとした。芹沢が体を支えてくれる。 「気がついたかな?」 扉が開いた方に目をやると、眼鏡の落ち着いた雰囲気の青年が入ってきた。 「はい。まだふらついてるみたいなので、もう少し休ませてもいいですか?」 「うん、大丈夫だよ。出るときに消灯して、この鍵を僕の部屋まで持ってきてもらえる?101号室だから」 「はい。ありがとうございます。秦野先輩」 芹沢は立ち上がり、お辞儀をする。日和もベッドで上半身を起こした上体で、軽く会釈をした。 扉が閉まり、芹沢はベッドの横の椅子に腰かけた。 「そういうわけだから、まだ休んでて大丈夫だよ」 「俺、風呂場で倒れたのかな?」 「そう、のぼせたみたいだな。湯船に入ってるときだから、頭打ったりはしてないけど。大事がなくてよかった」 芹沢が安心したように微笑む。日和は申し訳なさに俯いた。 「芹沢が運んでくれたのか?ごめんな、迷惑かけて」 「大丈夫だよ。それより、俺がいるときでよかった。これからも、風呂のときは気を付けてな?」 「うん、ありがとう」 恥ずかしさと情けなさで、芹沢の顔を直接見ることができない。芹沢は、まだ体調が優れないと勘違いしたのか、優しく日和の頭を撫でてくれた。

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