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第12話
数分休んでから部屋に戻るまでの間、芹沢が説明をしてくれた。
意識を失った日和を脱衣場に連れていったときに、ちょうど柴咲が様子を見に来てくれて、寮内にある医務室まで案内してもらったのだという。
「さっきのは3年の秦野先輩。保険委員なんだってさ」
柴咲先輩は消灯に伴う戸締まりの確認があるからと秦野を呼んでくれたのだが、とても心配してくれていたという。後でお詫びとお礼に行こう、と二人で話した。
部屋に戻って、もうそろそろ寝ることになった。
日和はベッドに寝転がり、暗くなった天井をぼんやり見つめる。
「芹沢、もう寝た?」
「まだ。どうした?」
「今日は本当に、迷惑かけてごめんな」
下で寝ている芹沢が寝返りをうったのか、微かに衣擦れの音が聞こえる。しばらく沈黙が流れる。罪悪感に何度も謝ってしまう日和に、芹沢はその都度気にすることはないと言ってくれた。いい加減呆れてしまったのだろうか。
「そうだ、小春。代わりと言うわけじゃないけど、今度ちょっと付き合ってくれない?」
「え?」
芹沢の明るい声に、ほっとする。その後で、付き合うという言葉にどきっとする。
「東京で行きたいところがあったんだ。小春は土地勘あるだろうし、一緒行ってくれるか?」
「もちろん!芹沢、ありがとう」
「こちらこそ」
日和が後ろめたさを感じないように、提案をしてくれたのだろう。それも、最高に楽しみな約束だ。
「おやすみ」
「うん、おやすみ。また明日な」
日和は幸せな心地で眠りにつくことが出来た。
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