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第4話
それは、日和が誰にも打ち明けることができない秘密に関係している。
きっと、叶うことはない、けれど期待をしてしまう、初めての気持ち。会ったばかりの芹沢に対して、そんな予感を持ってしまうことも、恥ずかしいのだけれど。
恋をしたい。男性にしか興味を持てない自分でも、高校生らしく、甘いお付き合いというものをしてみたい。日和が寮生活を選んだのも、近しい場所で共同生活をすることで、同性同士であっても恋が芽生えるのではないかという期待が、一番の理由であった。
「悪いな、掃除手伝ってもらっちゃって」
「ううん。俺の部屋でもあるんだし。俺、荷物ほとんどないからさ」
「俺もボストン一個だよ。足りないものは買えって言われてさ」
窓も扉も全開にして、柔らかな日差しを受けながら、日和は床のぞうきんがけを始めた。
芹沢は窓や机を拭きながら、持ってきた本などを手際よく配置していく。とても慣れた手つきで、日和は感心して聞いてみた。
「ああ、俺の家、父子家庭でさ。色々手伝ってたら慣れたんだ」
「そうなんだ、…ごめんね、立ち入ったこと聞いちゃって」
「全然。こっちが言ったんだし、気にしてないからさ」
芹沢が何でもないように笑う様子に、チクリと胸が傷んだ。もっと彼のことを知りたい、広がっていく思いを日和は止めることが出来なかった。
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