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第8話
食事を済ませ、寮へと戻る道すがら、まばらの星空を見上げる。
そういえば、今日のような日が小春日和と芹沢は言ったけれど、季節はすっかり春なんだよな。と今更ながら思う。間違いやすいけれど、小春日和の小春は初冬の意味で、日和が生まれたのもその季節。今度、笑い話にできるだろうか。
「明日、入寮式だな」
「うん、何やるんだろうね」
横を見ると、芹沢も空を見上げていた。日和と同じ、期待と不安が入り交じったような表情だ。
綺麗な横顔、触れてみたらどうなるのだろう。危険な妄想に囚われながら、日和は寮までの帰路を悶々と歩いた。
寮の部屋に戻りしばらくして、扉がノックされた。
「はーい?」
「新入生だよね?」
日和が扉を開けると、ひょろりと華奢な青年が人懐こい笑顔を見せた。左頬にだけエクボが見える。
「2年の柴咲です。これから風呂使っていいから、伝えに来たんだ。学年で時間が決まってるんだけど、詳しいことは明日の説明で話すみたいだから」
「わかりました。ありがとうございます。俺は小春です。こっちは芹沢です。」
「よろしくお願いします」
二人緊張した面持ちで会釈をすると、柴咲と名乗った先輩も丁寧にお辞儀を返してくれた。
「ご丁寧にどうもー。あんまり緊張しないでね。風呂は一階にあって、シャンプーとか備え付けのは自由に使っていいからね。じゃ、また明日ー」
ひらひらと手を振り、戻っていった。
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