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「ああ、終わったんだ?」
ぺたりとその場に座り込んだら石灯篭のそばで休んでいた深山木が声をかけてきた。
言葉を発するのも億劫で、途中で飽きて掃除を投げ出していた彼に僕は頷いてみせる。
墓地に来る途中自販機で買った、バッグの中に入れていた炭酸のペットボトルを取り出すと深山木は磨り膝で僕の隣までやってきた。
「飲みたい」
口にする前に真顔で催促された。
僕は半分飲みかけの、炭酸がすっかり抜けて温くなったペットボトルを手渡した。
蜩の羽擦れの音を遠くに聞きながらペットボトルを傾ける深山木を隣にして、僕は肩で息をついた。
「わっ」
不意に深山木に引き寄せられた。
条件反射で目を瞑った僕は唇に唇の感触を覚える。
間抜けな味の炭酸を口の中に流し込まれて、半分零し、半分飲み込んだ。
「楽しかった、今日」
顔を離した深山木が笑う。
僕は軍手を外して濡れた口元を拭い、項垂れた。
「それにさ、俺、澄生の事考えてたんだ」
「……え?」
「今頃、何してるのかなぁって。そんな事考えてたら、さ。澄生がここにいた」
上空で高架線が描いた五線譜にカラスの翼が添う。
宵に入りかけの、青紫に澄んだ時間帯のそれはまるで精巧な影絵のようだった。
「俺、すごく嬉しかったよ」
舌の上に残る間抜けな炭酸の味と深山木の弾んだ声が僕のどこか奥深くへ溶けていった。
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