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語尾まで聞き取りやすい滑らかな声だった。 肌は色艶がよく、僕や深山木より上背があって、しゃんとしている。 それでいて自然に流した髪は白髪交じりで年齢不詳という表現がぴったり当てはまる人だった。 「俺と澄生、今からお化け屋敷に行くんだ。先生も来る?」 ぎょっとした。 そんな展開、ありえない。 僕は慌てて深山木に意見した。 「深山木、その、この人とは久し振りに会うんだろ? 廃墟はまた今度にして話でもしたら。僕は帰るから」 深山木はただでさえ大きな双眸をさらに大きくし、先生と僕を交互に見、頷いた。 意外な態度に僕は拍子抜けした。 あれだけ楽しみにしていた廃墟行きが先延ばしになったというのに彼は別段がっかりするでもない。 とてつもなく居た堪れなくなった。 「お気遣い、ありがとうございます」 先生が声をかけてくる。 僕は口の中で不鮮明な別れの言葉を呟いてその場を後にした。 二人の会話が聞こえなくなるよう足早に通学路を進んだ。 深山木があんな風に僕から離れるなんて思いもしなかった。 先生みたいな人。 それって、何だ。 何で僕の方ががっかりしてるんだ……。 「澄生君」 びっくりして振り返った。 「途中までご一緒してもいいですか」 深山木と残してきたはずの先生がそこにいた。 深山木の姿は見当たらない。 僕はすぐに返事ができず、上体を捻らせた中途半端な姿勢で硬直していた。 「由君には先に帰るよう伝えました。ご迷惑でしょうか?」 その問いかけを肯定できるわけがない。 僕は慣れない敬語に辟易しつつも首を左右に振った。 相変わらず不思議な微笑を湛える先生は「よかった」と呟いた。

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