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第3話
「泣きたくなったら我慢せずに泣きなさい」
男性の言った言葉に胸が苦しくなって気付いたら目からポロポロと涙が零れ落ちていた。
兄さん!
泣き出した僕を男性は自分の方へと引き寄せ包み込むように優しく抱き締めて背中をポンポンとリズムよく叩いてくれる。
まるで小さな子供をあやす様に・・・。
それからダムが決壊したかの様に泣きじゃくった。
「頑張ったな、暁斗(あきと)もう心配ない」
「にっ・・兄さん・・ゔぅっ・・・・」
僕は男性の背中に腕を回して着ているスーツの上着をギュッと握りしめた。
凄く高価そうなスーツだったのに男性は何も言わずに僕を優しく抱きしめていてくれた。
「申し訳ございません。よろしいでしょうか?」
「構わないから幸大君を病院へ連れて行ってくれないか?病院の方へは連絡してある。谷島(やじま)、俺達も後から行く頼んだ」
「かしこまりました」
僕は2人の会話を男性の胸に顔を埋めて聞いていた。
声からして谷島と呼ばれた人はこの男性よりも声が高くて若い様に思える。
この男性は何者なの?
どうして僕と幸大の名前を知っているんだろう?
そんな事を考えていると自然と涙が止まり色んな事を疑問に思い始めたのだ。
「あの、失礼ですが僕の兄夫婦のお知り合いですか?だから僕の名前とか知っていらっしゃるんですか?」
男性は僕を抱きしめていた手を緩めるとその手を僕の両頬に添えて包み込む様にして僕の顔を上を向かせる。
僕は身長差が20cmもあるかと思う位に男性を見上げる形になってしまっている。
背高い。
顔をこの時初めて見た気がするが鼻筋が通って綺麗な二重で顎ラインもシャープでいて綺麗な顔立ちをしていた。
兄夫婦にこんな知り合いがいたんだ。
モデルさんみたいだ。
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