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第5話
病院に向かう途中の車内では昔話をしていた。
まるであの頃に戻った気がして凄く凄く嬉しくて兄さんが亡くなったとか忘れちゃいそうになるくらいだった。
けれど兄さんの話になると急に悲しみとか不安な気持ちが押し寄せてくる。
「そんな顔をするな暁斗。後で話そうと思ったんだがもしお前が良ければ一緒に暮らさないか?ベビーシッターを雇ってるから幸大君の面倒も見てもらえる悪い話ではないと思うんだがどうだろう?」
「一緒に・・暮らす」
「まだ気持ちの整理とか幸大君の事で大変だからと落ち着いたらと思っていたが暁斗の顔を見たら気持ちが押さえれなくなって言ってしまった。すまない。すぐにじゃなくて良いから考えてくれないか?」
「えっと・・・はい」
どうしよう。
確かに申し出は嬉しいけどそこまで甘えて良いものかと考えた。
それに兄夫婦が一緒に住んでいた家は賃貸だけれど思い入れがある。
でも幸大を育てながらとなると金銭的にも色々と難しい。
葬儀で色々と忙しくて幸大と2人で暮らしていく事なんて考えていなかった。
病院に着く間に僕はこれから幸大との生活を考えていた。
「幸大君の具合はどうだ?」
「ひきつけを起こされていたようですが今は大丈夫との事なので自宅に帰れますがいかがなさいますか?」
谷島さんの腕の中で気持ち良さそうに寝ている幸大を見て僕は決心がついた。
幸大の為にも迷ってる場合じゃない。
「紘兄ちゃん、一緒に住んでも良いですか?住まわせて下さい。お願いします。」
これが幸大にとって一番なんだと思えたから僕は紘兄ちゃんに頭を下げてお願いをした。
「こちらからもお願いする。暁斗、だから頭をあげなさい。」
そう言いながら紘兄ちゃんは僕の頭を優しくポンポンと叩いてくれた。
顔上げれないよ。
泣いちゃってるんだ僕・・・紘兄ちゃん。
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