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第6話

「じゃあ、行ってくるから帰りは明後日になる」 「はい。行ってらっしゃい」 あの日から2ヶ月が経ち僕は会社を辞めて幸大と紘兄ちゃんの愛娘の3歳になる真理亜(まりあ)ちゃんを見ている。 真理亜ちゃんが僕を見て気に入ったらしくベビーシッターさんの言うことを聞かなくなり手を焼いたベビーシッターさんが辞めたいと言ってきたのだ。 それまで良い子だった子が急に言う事を聞かなくなったらベビーシッターさんも困るよね。 幸大も泣いたら止まらないし辞めたくもなる。 話し合って僕が仕事を辞める事にした。 辞めるまでは良い子にしてるんだよと言うと真理亜ちゃんは以前と同じように良い子になりどうしてか幸大もあまり泣かなくなった。 この2人は何か通じているんだろうか? 紘兄ちゃんは有名な食品メーカーの代表取締役だから僕が働かなくても何とかなると言ってはくれている。 それでも男だから養ってもらうとかは気がひけるんだよ。 そして忙しい紘兄ちゃんは今日から出張に行ってしまう。 「パパ、いってらっしゃい。あきちゃんあっちであそぼう」 「真理亜ちゃん、パパに行ってらっしゃいのチュウしないの?」 「しないのあきちゃん。あそぼう」 「だあっ!」 「こらっ、幸大は落ちちゃうから動かないでよ」 幸大も何故か真理亜ちゃんの行く方に体を向ける。 明後日まで紘兄ちゃんに会えいのに真理亜ちゃんは寂しくないのだろうか? 「真理亜ちゃん、少し待ってね」 「やぁ〜。あきちゃんはやくはやく」 「だあっ、だあっ!」 真理亜ちゃんの言う事に幸大も反応して暴れる。 どうしたら良いんだよ。 「暁斗、いいから2人と遊んでやってくれないか?」 「でも・・・」 「俺は大丈夫だからちゃんと家に帰ってくるから心配するな暁斗」 優しく微笑んで安心させるように頭を撫でてくれる。 玄関で見送る時に兄夫婦の事を思い出して不安が押し寄せてくる。 もしかしたら紘兄ちゃんも兄夫婦みたいに帰ってこないんじゃないかと思ってしまう。 紘兄ちゃんはそれに気付いてくれていつも『大丈夫だから暁斗』そう言って頭を撫でてくれる。 優しくて大きな紘兄ちゃんの手の温もりで僕は落ち着くのだ。 「行ってらっしゃい。紘兄ちゃん」 「着いたら連絡するから暁斗」 僕はコクリと頷いて笑顔で出掛けて行く紘兄ちゃんを見送った。 ちゃんと帰ってきてね紘兄ちゃん。

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