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第9話
総合病院までは車で1時間近くかかりその間は誰もが黙ったままだった。
幸大は車が動き出すとすぐに寝てしまい真理亜ちゃんも暫くは起きていたみたいだが寝てしまっていた。
「着きました。真理亜さんは私がお連れします」
「ありがとうございます」
僕は荷物を持ち幸大を起こさないように抱き上げると真理亜ちゃんを谷山さんに任せて足早に総合病院の受付まで歩いた。
「暁斗さん、こちらです」
「谷島さん、紘兄ちゃんは紘兄ちゃんは大丈夫なんですか?」
泣きそうになりながら話をしているとゆっくりと歩いてくる紘兄ちゃんの姿が視界に入った。
「谷島、暁斗に連絡したのか?」
「社長、すみません。状況が分からなかったもので連絡致しました」
「よか・・良かった」
僕は紘兄ちゃんの歩いている姿を見て安心したのかその場に座り込んでしまった。
「暁斗!大丈夫か?」
「うゔっ、良かった。紘兄ちゃんに何もなくて良かった」
「過労だと言われて2、3日は安静にしろと言われたんだ。出張は先方に日程変更して貰ったから暁斗、家に帰ろう」
僕の目の前にしゃがみ込んで僕の頭をクシャクシャとして紘兄ちゃんは笑った。
紘兄ちゃんに何もなくて本当に良かった。
何かあったらと怖くて怖くて仕方なかったんだよ。
「うゔ・・ぱぁぱぁ」
「幸大?」
「紘兄ちゃんを見てパパって言ったの?」
「たぶんだが聞き間違えでなければ俺を見て言ったと思う」
僕は幸大の言った事に驚いて目から溢れ出ていた涙も止まった。
幸大はそれから紘兄ちゃんを見て嬉しそうに笑い何度も『ぱぁぱぁ』と言っている。
凄く苦しいよ。
幸大のパパとママは遠くに行ってしまったんだよ。
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