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拾ったモノは…③
そして、今…
担当の高原さん…御歳 41歳、男、独身…の視線が相当痛い。
「葛西さん…どういうおつもりなんですか?
遅刻した挙句に犬を連れて来るなんて…前代未聞ですよ、こんなの。
あなた、うちとの取引を真剣にお考えなんですか?」
「いえ、あの、申し訳ありません!ふざけてる訳じゃないんですっ。
言い訳になりますけど、これには事情があって…」
そう。あの後…
子犬のたった一声の強烈な泣き落としに負けた俺は、その場に誰もいないのをいいことに、ストリップさながらアンダーシャツを脱ぐと、その子を包 んで胸元に押し込み、そのまま商談に望んでいたのだった。
大きな目をキョロキョロさせて、子犬は大人しく俺の懐に収まっていた。
そこへ専務の小川さんがニコニコしながら入ってきた。
既に事情を聞いていた彼は、子犬の頭をちょんちょんと撫でて
「俺は猫派だけど、この子はかわいいねぇ。
いやぁ、葛西君が犬好きだとは知らなかったよ。
普通は見捨てて置き去りにするんだけどねぇ。
動物に優しい奴には悪い奴はいない。
うん、気に入った!
葛西君、君の会社と取引をしよう!
もちろん、君が担当だよ。」
「あ、ありがとうございますっ!
今後ともよろしくお願い致しますっ!
あ、でも、次回からは犬は連れて来ませんのでっ!」
さっきまで怒っていた高原さんも一緒になって大爆笑の渦の中、子犬がうれしそうに『くぅん』と鳴いた。
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