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シルバの正体①
このチビ助を部屋に置き去りにするわけにもいかず、俺はシルバと一緒に出勤した。
俺達を見た瞬間の中澤課長は「呆れてモノが言えない」と冷たかったが、シルバに見つめられ“きゅん”と一声鳴かれただけで、デロデロになり…落ちた。
「シルバちゃーん、おじさんとイイ子でお留守番ちまちょうねぇー。
おっ、そうか、そうか。葛西より俺の方がいいのか!
お利口さんでちゅねぇー。」
あんた、いくつだ?なぜ幼児語?
シルバは完全に嫌がって、課長の鼻先に犬パンチを食らわせている。
だから陰で『キモジジイ』って言われるんだよっ!
でも、シルバを連れて外回りするわけにもいかないし。ここに残るのは課長だけ。
俺はシルバの頭を撫でながら言った。
「いいか?シルバ。
俺は今から仕事で外出しなくちゃならねーんだ。
だからお前は『このおじさん』の言うことをちゃんと聞いて、いい子で待ってるんだぞ?
わかったか?」
俺の目をじっと見ていたシルバは、まるでわかった とでも言うように
“わふっ!”
と鳴いて尻尾を振った。
その日何とか業務をこなし、シルバとの別れをマジで悲しんでいる課長を引き剥がし「明日もお願いします」と帰宅の途に着いた。
あの、シルバを拾った横道に差し掛かった頃、シルバがそわそわし始めた。
「どうした?お前を拾ったところだよ。
何か気になるのか?」
とシルバに話しかけた瞬間、目の前に黒い物体が現れた。
「銀波 っ!!!見つけたぁっ!!!」
「きゃうん!!!」
俺の懐からスポンと抜け出したシルバは、その物体…いや、よく見たら人間だった…に飛びついた。
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