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シルバの正体③
「本当の飼い主さんが見つかったのなら、帰らなくちゃ…な?シルバ。
俺、お前と一緒にいて楽しかったよ。
ありがとうな。」
そっと頭を撫でると、ペロリと俺の手を舐めてきた。
別れるのが辛くて胸がきゅうっとした。
「あ、私は『須崎 黒曜 』と言います。
しがない物書きです。
このお礼はいかほどでも…日を改めてお礼をさせて頂きたい。
本当にありがとうございました。
あの、連絡先を教えて頂きたいのですが」
「ええっ!?『須崎 黒曜』って、あの有名なミステリー作家の!?
メディアには絶対に出ないって噂の!
俺、ファンで全巻揃えて持ってますっ!
好きすぎてボロボロになるまで読み込んで…
うわっ、嘘っ…どうしよう、俺…
あ、あっ、俺は『葛西 輝 』といいます。
葛西臨海公園の『葛西』に『輝く』で『てる』です。
そんな、お礼なんていいですよ!
この子のお陰で、大事な商談を纏めることができたんですから、逆にお礼を言いたいのはこっちの方ですよ。
そうだ…うちにこの子用のグッズがあるので、よければ持って帰って頂けませんか?
俺にはもう必要ないので…」
「銀波のために…余計な散財させてしまったんですね。
申し訳ありませんでした。
かかった費用も加えて、是非ともお礼をさせて下さい!
では取り急ぎ…不用ならば持ち帰りましょうか?」
「ここからすぐなので、お願いします!」
俺達は並んで歩き出した。
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