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シルバの正体⑤
「銀波っ!戻れっ!ダメだ!!」
「やだっ!ママと離れるの、やだっ!」
ママ?ママって…俺?
銀波?やっぱりこの子は…犬のシルバ?
「あのー…説明してもらってもいいですかね?」
冷静な俺の台詞に、諦めたように大きなため息をついた須崎さんが、シルバ(!?)を俺から引き離し、起き上がらせてくれた。
「…どうも。お茶、入れてきます…」
子供がシルバ?
シルバが子供?耳…生えてるぞ?
頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされたまま、熱い煎茶とシルバ用にオレンジジュースをテーブルに置いた。
「…この子…シルバ…ですよね?」
恐る恐る尋ねると、意を決したように須崎さんが答えた。
「ええ、そうです。」
シルバは須崎さんの隣に正座して、俯いて座っていた。
耳は見事に倒れている。
シルバは濡れた目で俺を真っ直ぐに見つめて言った。
「僕…道に迷って帰り道わかんなくなって…お腹空いてきて…もう、死んじゃうと思ってたら…
ママが助けてくれたの。
お腹いっぱいご飯食べさせてくれて…お風呂に入れてきれいにして、たくさん遊んでくれた。
夜、一人は寂しくて泣いたら、お布団で一緒に寝てくれた。
お仕事のところへも連れて行ってくれた。
おじさん達も、いっぱい遊んでくれたよ。
僕、ママとずっと一緒にいたい!
ママとお別れするの、いやっ!」
ぽろぽろと大粒の涙を零して泣きじゃくっている。
須崎さんは、その頭をそっと撫でながら
「葛西さんはママじゃないんだよ。」
と優しくささやいた。
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