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シルバの正体⑥
「すみません、本当にびっくりさせてしまって…
私と この子は、人狼です。
この子の母親は…昨年病気で亡くなりました。」
人狼?
都市伝説かと思ってた…
そういう人達が長い年月をかけて、人間社会に上手く溶け込んでるって聞いたことはあったけど。
目の前のこの人達が人狼?
俺は黙って須崎さんの言うことを受け入れようと思った。
こくりと頷くと、姿勢を正して須崎さんに向き合った。
「大昔は、ヒトと人狼と、お互いの存在を知らずに、きっちりと別れて暮らしていました。
しかし、時代の流れもあったのでしょう、そのうちに結びつく者が出てきました。
長い月日をかけて…段々とその血も薄れていって、今では純粋な人狼の血を引く者はいないと聞いています。
人間は…自分が人狼の血を引いているなんて思わないでしょう?
都市伝説だと。
そんなことは絵空事だと。
私達のように里を離れ、ヒトに紛れて暮らす者も大勢います。
あなたの身近に人狼はいるんですよ。
ひょっとしたら、あなたもその血を引いているかもしれない。」
そこまで話し終えると、須崎さんは「いただきます」とお茶を一気に飲んだ。
素人を騙すテレビ番組じゃないよね?
突然後ろから誰かカンバン持って出てこないよね?
「…わからないけど…わかりました。
あっ!俺、シルバにドッグフード食べさせちゃった!
シルバ、ごめんな?
俺、お前のこと子犬だって思ってたから…」
「あれ、美味しかったよ?」
「本当にごめんな?」
そんなやりとりを須崎さんは不思議そうに眺めていた。
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